今までにない「大切な人」
「大切な人」1人バージョン。
たくさんのお客様の熱い拍手と、涙の中、公演を終えることができました。
2011年から色々なバージョンで公演を続けて来たこの公演。
わたしひとりで上演したのは初めてのことでした。
そして、ずっと「ムリ」と決めつけていたひとりバージョンでしたが、
今までにない素晴らしい
公演となりました。
今までたくさんの素敵な俳優さん達が、
母や祖母、祖父、わたしの家族、親戚達を演じてくださいました。
わたしはこの方達のようにたったひとりで何役もの人を演じきれない。
それが、ひとりバージョンが「ムリ」と、思っていた大きな理由のひとつでした。
今回、その「ムリ」と決めていた
ひとりバージョンを上演しようと決めたのは、頭はムリと思っていても、心が、なぜかとてもしっくり来る事でした。
決めたものの、やはり、何人もの人を演じ分けられるのか、という事は大きな課題でありました。
が、ある時、ふと、思いました。
この物語に出てくる登場人物は、ほとんどわたしの血の繋がった人たち。
わたしが演じなくても、勝手にやってくれるのではないか?
そう思うと、
なんだか出来そうな気がして、
それどころか、それが出来るのは
血の繋がりのあるわたしだけ。
わたしにしか出来ない公演が
出来るのではないか?と、
今までにない何かが湧いて来ました。
本番、それは思った以上の結果に
繋がりました。
お客様と会場が
今までにない一体感になり、
お客様の感動がこちらにまで
伝わって来ました。
わたしひとりが演じたのでなく、
素晴らしいミュージシャンの方々に
助けられ、
見えない力がこの公演を創り上げてくれた事を感じました。
「今までは、当時の臨場感を感じながら、傍観していましたが、今回は臨場感というより、少し異次元な感じで、
登場人物の目を通し、その当時を見てる
不思議な感覚で、より引き込まれました。」
こんな、感想をくださった方がありました。
それは、そういう事なのだと思います。
公演から1カ月経ちましたが、
わたしの中に今までにない
何かが芽生えたのは確かで、
これからもそれを大切に公演を続けて
行きたいと思っています。
今日9月17日は、呉の洪水があった日です。
73年前のことです。
戦争中、軍が松の木を乱伐したため
起きた洪水です。
「大切な人」の中に出てくる
重要なシーンのひとつであり、
わたしの家族はこの洪水に巻き込まれ、
流されましたが、奇跡的に曽祖母が、
赤ちゃんだった母を助けていました。
曽祖母はこの傷が元で亡くなりましたが、その時、曽祖母が母を助けてくれたから
今わたしはここに存在していて、
この「大切な人」を上演できていると
思うと、不思議なものを感じずには
いられません。
今年も大雨や洪水、地震、
いくつもの自然災害がありました。
わたし達はいつも自然と共存していて、
自然の中にあり、
自然の一部であることを、
忘れてはならないなぁと思います。