今、伝えなくては…「太鼓たたいて笛ふいて」 | 仲代奈緒オフィシャルブログ「ココロの部屋」Powered by Ameba

今、伝えなくては…「太鼓たたいて笛ふいて」





大竹しのぶさん主演「太鼓たたいて笛ふいて」を観劇しました。


チケット入手困難な程、話題の作品。


ご縁があり、観る事が出来ました。


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とにかく、今、多くの人が観て、感じなければならない作品です。


物語は大竹しのぶさん演じる作家林芙美子の生涯。


彼女の生涯を通し、彼女が関わった人と、彼女を通して伝わる戦争の物語。




登場人物はたったの6人ですが、

戦争に調子良く、要領良く乗っかる人、

それに巻き込まれ加担して行く道を選ぶ人、

それに巻き込まれ幸せだった人生を狂わされる人、

ずっと信念を貫き続ける人、

そして、世の中に踊らされ気づかぬうちに戦争を賛美し、人々を巻き込んで行く人…、と


6人の1人1人が私たちの象徴であり、
そして、いずれの人にも戦争は悲しい傷跡だけを残して行く事を感じずにはいられませんでした。



放浪記で有名になった林芙美子でしたが、世の中の流れと共に彼女の作品は発禁となり、行き詰まって行きました。

そんな時、彼女に詞を書かせ一儲けを狙っていたレコード会社のプロデューサーは、「戦争は儲かる」という物語を彼女に伝えます。

彼こそ、レコード会社から放送局、そして内閣情報局と世の中に合わせ仕事を変え、調子良く生きていた人物です。



「戦争は儲かるという物語に日本は乗らなくてはならない」



それをきっかけに彼女は従軍記者として、戦地に赴き、日本の快進撃を伝え、戦争賛美します。



ところがシンガポール、ジャワ、ボルネオと、回るうちに彼女は真実に気づかされます。



そして一転

「あとは綺麗に負けるしかない」

と言ったのです。



それには、内閣情報局の男も、昔行商人をしていて芙美子の母と親しかった青年だったが、世の中に流され憲兵になった男も、「その発言を取り消しなさい!」と、怒りを露わにします。


「あなたは日本愛していないからそんな事が言える!
非国民だ!」

「いいえ、日本を愛してるから言うのです。」




「あなたは戦争は儲かると言いましたがそれは間違いでした。」

「それは終わってみなくてはわからない!」

「いいえ、もしも儲かったとして、死んでしまった人にどうやってお金を払うのですか?」




「ここで滅んでしまうには日本はあまりに素晴らし過ぎる」



まさに、今、多くの人が、無関心な人達へ伝えたいのは、この思いからだと思います。


彼女は、自分が国民に対して太鼓たたいて笛ふいて、戦争を囃し立てた。

傷痍軍人、戦争未亡人、孤児、そういう人を作った責任がある。

そこから目を逸らして未来などないと、その罪悪感から反戦文学を書き続けました。





重いテーマの作品ではありますが、重く押し付けるのではなく、井上ひさしさんらしく、歌を交え、軽快に伝えて行きます。


でも、やはり、メッセージするものはズドーンと心に突き刺さってきて、
今の世の中と重なり過ぎている事に恐ろしさを感じました。


でも、希望がなくはないのです。



芙美子のように、人は気づくのです。

気づいた時に変われるのです。




この作品を観ていて、
先日お話を伺った元双葉町町長井戸川さんのお話や、
構成作家でありながら、テレビで伝えている事とテレビの裏側での真実との差に愕然とし、
「直接でなくても人々を殺すかもしれない事なんて私は出来ない」と、
構成作家の仕事をやらず、多くの食品の放射能の数値を測り続けた、ちだいさんの事を思い出しました。



原発事故、そしてその後の国の対応は戦争当時と同じ事を繰り返しています。


大本営発表をし、国民はそれを信じ、大丈夫だと、安心して暮らしているのです。




井戸川さんは事故前の原発を抱えていた苦労、そして事故後いかに大変かを身を持って経験され、それを1人でも多くの人に伝えたいと、沢山講演をされてきました。



「国は国民が真実を知り、声を上げるのを恐れている、だからあげていかなければならない。」


今、国は「福島」という前例を作ろうとしている。

事故を過小にし、伝える事で、そういう前例を作り、
「原発事故を起こしてもこのくらいの被害です、福島ではこうでしたから」と言う事実を作りあげ、今後起こるかもしれない事故の基準にしようとしているのだと。


それをさせてはいけない、
させないために今、起こっている事実を知り、声を上げてほしいと、
「私の声が出るまでは伝えて行きたい!」と、病の体で訴えられていました。




大竹しのぶさんもパンフレットの中で、

「嘘の物語でおどらされないためには、
ある程度の知識を持ち、
一人一人が考えなければ行けません」
と語っています。



原発事故の事だけでない、秘密保護法のような法律が通り、この物語の中のような事がまた起こるかもしれない世の中になりつつあります。



色々な人と話すと、
「そんな世の中になったら、自殺しても戦争なんかいかない」とか、
「守るものがあるから、心では反対でも従わなくてはならないのだろう」とか、
いますが、これは放射能被害においても同じ、

守るものがあるからこそ、声をあげるのだと思いますし、
自殺してまで抵抗する思いがあるのなら声をあげられると思うのです。


なぜなら、今ならまだ、間に合うかもしれないからです。


福島原発事故から三年経ちますが、本当の放射能被害はこれからです。

そして、今、戦争は起こっていません。


「今」なら大難を小難に、小難を無難に変えられるのです。


そのためには一人一人が無関心ではいけません。

そして、黙っていることは賛成していることと同じです。


真実を自分の力で知り、そして本当に大事なことは何か、考えて欲しい…。




みんなもっと自分を、家族を、周りの人を、世界中の人を、生き物を愛して下さい。


愛せば愛すほど、無関心ではいられなくなるはずです。



今、みんなが自分を大切に、家族を大切にと思ってしている事は本当に大切にしてることなのでしょうか?


本当に「大切なもの」を大切にしてるのでしょうか?


地位、名誉、お金、そんなものが幸せにしてくれると思っていないでしょうか?



本当に大切なものを思い出し、本当に愛してください。



世界中がもっともっと愛で溢れますように…。



この作品を観て、また、そんな思いにさせられました。