生きること。 | 仲代奈緒オフィシャルブログ「ココロの部屋」Powered by Ameba

生きること。




昨日8月6日は、広島に原爆が落とされた日です。

昨年の8月6日、広島の原爆を経験した亡き母•宮崎恭子が「これだけは遺したい」と、7年間かけて書き上げた遺作の本を元に、歌で綴る、朗読劇「大切な人」をプロデュースしました。

戦争、原爆によって傷つけられた多くの人々…。
今、福島原発の事故で傷ついている方々と重なり、広島は過去で無く現在に続いていることに心が痛みました。
人間は自然を傷つけ、壊し、そして人間自身も傷つけている。
母の遺したこの「大切な人」は今を生きる私達へのメッセージではないかと思えました。
「沢山の方にこのメッセージを届けたい…」

お陰様で「大切な人」は、若村麻由美さん、山本太郎さん、二木てるみさん、冨家規政さんはじめ実力のある、多くの役者の方にご出演いただき、昨年は私の願い通り、再演を含め、9ステージの公演、1200人以上の方に観て頂くことが出来ました。


日本は、地球は、今までにない危機的状況に立たされており、私達一人一人が意識を変えていかなければ、日本だけでない、地球の終わりに繋がると私は思っています。

これからも一人でも多くの方にこの作品を伝えて行きたい。と思う8月6日でした。




6月、私はフィリピンに行きました。


「大切な人」のご縁で、山本太郎さんのお母様が、フィリピンの永住ビザをと取られることを知ったからです。


「今後に日本に何が起こるか分からない。
有事のことを考え、ビザを取ることは必要なことかもしれない」と、アドバイス頂きました。


私は、原発事故を経て、原発と放射能に対する恐怖を改めて感じ、311以降、色々な活動をしてきました。
脱原発のアクションにも関わってきてましたし、「大切な人」の上演もそのひとつです。

「この活動、やるからには命をかけて」という思いも心の片隅にはあり、自分が避難する事は具体的には考えていませんでした。

そんな中でこの永住ビザのお話し。


複雑な思いもありましたが、不測の事態を考え、「保険のつもりで持っているのも悪くないのではないか」と、6月、私もお母様とご一緒させて頂き、永住ビザの申請をしました。




初めて降り立つフィリピン。

美し過ぎる自然。

碧く果てしなく広がった海と空。

水平線から広がる夜空の、手が届きそうなほどの大きな大きな星たち。

黄金に輝く朝焼け、澄んだ海を泳ぐ沢山の魚たち・・・。

photo:01



今まで見たことのない、日本では失われてしまった美しい風景が溢れていて、涙が出そうでした。

photo:02




「なんて、素敵なとこなんだろう・・・。」


人間は自然に生かされているのに、私達はこんなにも自然を傷つけている。
便利さを追求するばかりに、本当に大事なものを忘れている。




あれだけの事故を起こしてもまだ、再稼働をしようとている…。

離れた地から今の日本を思うと、地球に対して恥ずかしくなる思いでした。




私は東京生まれの東京育ち。子供の頃から便利な生活をしてきたと思います。

それでも、この自然に触れたとき、動物である人間の本能なのでしょうか、「こういうところで生きたい」と思ったのです。



自然の美しさと、人の心の美しさは比例する・・・。フィリピンの景色と人々に触れ、私は日本人が無くしてしまった「大切な何か」を感じていました。


そして、ここで暮らす人々からは「生きるパワー」を感じました。
彼らは皆「生きるため」に毎日を生きていて、命がキラキラ輝き、10代の子でも、生活の知恵を持った賢い顔をしていました。

日本と比べたら、「貧しい」「豊かでない」と表現できるかもしれませんが、
何となくでも生きて行けて、日々の生活に流されている日本人にはない、強い強い力を感じました。
人間にとっての豊かさがそこにありました。


フィリピンで見た景色、出会った人々から、私は「生きることの先にしか未来はない」そう、強く感じていました。

先ほども書いたように、「脱原発」の活動をしていると、目の前のものと戦うことで、先を考える余裕が無くなることがあります。
命を削って活動されてる方も少なくないと思います。
実際、私もそんな思いでした。


そんな中、積極的に脱原発の活動をされていた山本太郎さんは「生きたいと思ったからこの活動を始めました」と初めからおっしゃっていました。

「日本人を絶えさせたくない。本当に日本が危ないと思ったら皆さん逃げてください」

フィリピンに来る前はこの太郎さんの言葉が分かるような、分からないような・・・。
でも、フィリピンで「生きることの力」を感じたときに、初めて太郎さんの言葉を心から理解できたのです。


「死」のほうではない、「生きる方へ」心が向いてなければ・・・。


ビルの谷間に生きる現代人には難しい事かもしれませんが、今、この思いを日本人に思い出して欲しいと思いました。




フィリピン旅行記は、まだまだ続きます。

また別の日のブログで、お伝えします。