山際の道をジョグっていて、頭上から、
キュイキュイ
と声がした。
多分猿だなぁ。
と、ふり仰ぎもせずに通り過ぎた。
威嚇の、
ホォホォフォフォ
じゃないなら、小鳥の声と同じだ。
無視しても、さしたる支障はない。
威嚇の声なら、少々警戒し、こちらも威嚇する準備をしなくてはならない。
折り返しての同じ道、復路。
声が聞こえた辺り。
前方の道の真ん中に、猿がデデンと座っている。
このまま進むと、猿にぶつかる。
それなりに大きな猿なんだが、だからと言って、引き返すのも嫌だ。
「どけぇ!どけぇ!!」
と叫んで、手をパンパンと打ち鳴らした。
どかなかったら、どうする?
って、ちっと不安がよぎったものの、スピード緩めず突入。
猿、こっちをチラリ、と見て、山際の岩にヒョイと取りつくと去って行った。
「悪い。通り過ぎるだけだから!」
山の方に声を掛けた。
あいつ、夕方の山道の真ん中で、餌を探すでもなく、仲間といるでもなく、何をしていたのだろう?
うん、まぁ、あいつも、
あの人間、夕方の山道で何しているんだ?
って、私の後ろ姿を見ていたんだろうな。