年末年始、実家回りでほぼ10日間留守にした。
帰宅後、畠に行ったら、あれやこれや、むちゃくちゃになっていたりして(風が強かったらしく、地面にハンマーで叩き込んだ鉄パイプがビニールシートに引きずられ、根こそぎ吹き飛んでいたのにはビックリ)、片付けにジタバタ。
暗くなるまでには全部修復できなかったので、続きは明日。
 
10日も人の気配がないと獣も安心するのか、家の庭先にまで糞をしてテリトリー宣言をしていた。
 
ここは私たちの家と畠なんだからね。
獣のテリトリーじゃないやい。
 
ぶつくさ言いながら、風に飛ばされたトラクターに掛けておくシートを回収して、掛け直そうとしたら、

トラクターの座席に、足跡が付いている。
獣の足跡だよね?
獣がトラクターの座席に?
 
途端、頭の中を「日本昔話」のメロディーが流れた。
 
昔、百姓をし始めたばかりの夫婦がおってな。
百姓仕事に馴れないもんで、毎日苦労して畠仕事をしておった。
畠には時々山の獣たちが来て悪戯をするので、夫婦は困っておった。
年の暮れ、夫婦が老父母の元に帰っている間に、山から獣たちが降りて来て、畠の隅のトラクターを見つけた。
タヌキどんが言った。
あの百姓夫婦のトラクターじゃ。
キツネどんが辺りを見回して言った。
どうやら今夜は2人とも帰って来んようじゃ。
そのキツネどんの言葉にアナグマどんがワクワクしてトラクターによじ登った。
どうじゃ?我らで畠を耕してみんか?
タヌキどんもキツネどんも手を打って頷き、トラクターの座席によじ登った。
そぉれぇ!
満月の下、3匹を乗せたトラクターは畠を、どっこんどっここん、と走り回ったとな。
年が明け、畠に戻って来た百姓夫婦は目を丸くした。
畠が綺麗に耕し終わっとる。
こげな悪戯なら大歓迎なんじゃがね。
 
あっ、もちろん、実際は座席の足跡だけで、トラクターは1ミリメートルも動いてはいませんでしたよ。