「かずき」と言う言葉と文字がある。

「かずき」は漢字だと「𨵱」と書く(環境異存の漢字なので化けてしまうかもしれない)。

「門」構えに「屋」を入れる。

帽子をかぶるように、人の借金をかぶる->皆で一緒に年貢などの負担する。

という意味を持つ字なのだそうだ。

洪水などで田畑が流れてしまった地区の年貢を皆で負担する。

と言う場合に使ったらしい。

 

私の暮らす集落の字は「野冠」(のかずき)と言う。

旧名では「冠」は「𨵱(門構えに屋)」だったそうだ。

河川整備の進んでなかった昭和の頃は何度かの洪水があった太田川の蛇行する地域にある集落で、畠の土を30-50センチも掘ると、河川敷にあるような大きな石(漬物石に使えそうな石)がゴロゴロ出てくる。

おそらく、そんなに昔ではない時期に、集落全体が洪水にあったのではないかと思われる。

そして多分、その時、田畑を流され、年貢負担を皆で(周辺の集落からとかから

)負担した経緯があって、その記憶として字に「𨵱(かずき)」の文字を残したのではないかと想像している。

 

私が野冠に移り住んだのは、ここで耕作できる農地を貸してくれる地主の方がいたことが第一理由だが、この地名に強く魅かれたことも大きい。

かつて、大災害(洪水)に襲われ、田畑を根こそぎ流され、年貢負担を皆から支援してもらって凌いだ土地だ。

その後、また、畠を耕し、山から水を引き、野菜を作り、柿を実らせ、再生して来た土地だ。

私がここで土を耕し、農作することも、再生への循環の一部分になるのだと思っている。

 

「のかずき」を「野冠」と書くのも好きだ。

「野の冠(ののかんむり)」

被るのは年貢ではなく、野の花冠の方が好いよね。