しわいマラソン2015、完走した。

明け方の靄っている山間、稲穂の垂れる田圃の脇の道を通り
(ほの明るい中、稲穂の垂れている田圃は、ぞっくと来る程麗しい)

深入山の麓で狸に会い
(って、ぬいぐるみのだけど。某銀行のマスコット。
かあいい。
見つけた途端、きゃぁきゃぁ言って走り寄り握手してしまった。
写真は後ろ姿。後姿もかあいい。)



餅木峠をガシガシ上り、内黒峠をヒョコヒョコ登り、
(餅木の登り方が斜度がきつく感じる。
内黒はより高くまで登るが餅木よりは斜度がゆるく思う。
正しい戦略かどうかは検討の余地十分にありだが、餅木は一気に上がり、距離の長い登りの内黒は抑えて登るようにしてみた。)

三段峡へ下り
(三段峡でトイレに行って座ったら、周囲がグラグラする。
地震か?と思ったんだが、私の頭の中が揺れていたらしい。
下りで相当脳みそを揺さぶったのだろうな。)

辛抱して脚を前に出すことだけに専念する龍頭峡折り返しを過ぎると、もしかすると、私はこの光景を見たいがために「しわいマラソン」を走るのではないか?とすら思っている、仁井の棚田だ。




この光景を見るための登りがきつい(しわい)!
餅木、内黒よりゆるく短い距離の登りなのだけど、餅木+内黒のエネルギーを私は必要とする。

昨年は稲刈りが遅れていて、全面稲穂が垂れる光景だったが、今年は半分稲刈りが行われ、半分稲穂が残っている状態。
残った稲穂は、ほぼ全部倒れている。
先の台風15号の時に、なぎ倒されたとのことだった。




応援に出て下さっていた仁井の棚田の農家の方「我が家の稲はずっこけた。あなた方はずっこけないで。」
こうした応援を受けると、泣けそうになってしまう。
膝がガクガクするだの、つらい(しわい)だの言っていられないよね。先に進まなきゃ。
って思える。

棚田から太田川岸に出るまでの下りも長い。
このあたりになると、ランナー間は相当ばらけていて、単独で走っている時間が長くなる。
最初は歌など歌っていたのだけど、それも辛くなってきて、ピッチに合わせて無言で頭の中で数を数えていた。
「一、二、三.....百」
百まで行くと、また一から数え始める。
走るのが相当しんどくなって来た時、走り続けるために、私がよくやる方法で、数を数えている間は、ともかく脚を前に出せる。
(百まで行った時、素早く「一」と最初に戻ることが肝心)

太田川まで出ると、スタッフの方、ボランティアの方、応援の方たちに声を掛けていただける。
もう少しだよ。
頑張って。
ファイト!
そう声掛けしてもらえると、数を一人で数えているより、ずっと楽に脚は前に出るようになる。
とてもありがたい。

ありがたいといえば、太田川に出て津波エイドに向かう途中で、Yさんが、私の名前を言って声を掛けて、アミノバイタルを手渡して下さった。
びっくり。
きっとポカ~ンとした顔をしていたろうな、私。
ちゃんとお礼言ったかどうかも覚えていない状態なんだが、ともかく、ものすごくありがたかった。
身体もきつかったし、気持ちの方も相当きつかった最中、こうした温かみを受けると、きつさが弱くなるわけでも、筋肉の痛みが軽くなるわけでもないんだけど、自分のどこかで別の力が動き出すように思う。

ペースは落ち、津波のエイドでは、キロ9分平均ぐらいになっていた。
すでに16時頃になっている。
制限時刻までにゴールできるかなぁ、と不安になり始めていた。
ここから先、今の私では、キロ9分のペースは速くはならない。
ここからの10数キロでもっと落ちていく。

しわい蛙さんとハイタッチをしようとしてダッシュした以外は、次第次第にペースは落ち、加計のエイド(かけはし)を過ぎるころには、キロ10分になっていた。
歩いた方が速いかもなぁ。
とか思いながら、ジョグより遅いスピードで(本人の「つもり」としては)走っていた。

ここからの楽しみは、温井ダムを見上げることと、ダムの階段を上ること。

温井ダムの481段階段は、脚がもう上がらない状態で登って行くんだが、なんだか楽しい。
ダムというほぼ垂直の壁面を足を使って上ることなんて、滅多にできることじゃないし、ダムの大きさ、渓谷の深さを上りながら見上げ、振り返る楽しみがある。
登り切って1キロ行けばゴールという天国が待っているのだしね。

夕暮れにゴール。

走行時間:12時間19分