とびしまマラソン(ハーフ)にエントリーはしたものの、一週間前まで出ることを迷っていた。
昨年11月の下関海響マラソン、1月の菜の花マラソンの、膝、腿に起きた好ましからざる状態を思い出すと、走っていいのかどうか、今走ったら、また、回復しかけている膝と腿が元の木阿弥になるのじゃないか、そんなことばかり頭に浮かんで、ずっと苛々モヤモヤしていた。


2月19日、出場すると決めた。
決めはしたが、闇雲に「きゃほ~い」と走ってしまったら、また面倒なことに足がなりそうだ。
今回のハーフは、そうならないための練習として位置づけようと思った。


19日から一週間、スピードを上げて(と言っても10.5km/hまでだけど)走ってみて、左右の踏み込みバランスが、どの時点でチグハグになるかを見てみた。
スタートして2km前後で身体があたたまり、スピードを上げて走り始める。
その後、半キロから1キロの間で、左右の踏み込みバランスが崩れることがある。
そのまま走り続けると、チグハグが大きくなり、身体が大きく揺れ始める。
左右足のチグハグを感じた時点で、ジョグ程度のスピードに落として、身体のブレを押さえ、左右の踏み込みを均等にするよう意識し、その状態を半キロ程度続けると、その後、スピードを元に戻しても、左右足のチグハグはかなり押さえることができる。


これが、現在の私の走り方の癖なのだとしたら、
「キロ6分までのスピードで走る。」
「走り始めて5kmはキロ8分台で走る。」
「左右の足の踏み込みバランスが悪くなったら、ジョグ、もしくは歩いて調整をする。」
これを守ることができるなら、おそらく、足に痛みはこないだろう。と判断した。


とびしまマラソン当日の今日、風冷たく曇り空ではあるが、時折日が差し、風力はそれ程強くないマラソン日和。
コースは、海沿いを行き、島と島を繋ぐ豊島大橋を渡る、風光明媚な素敵なコースだ。
蜜柑の実の残る木、6分先の梅。
島々を眺めながら走る贅沢。
大きな鳶が頭上をホバーしている。
ただし、海抜ほぼゼロから、島と島を結ぶ橋が架かっている高台まで上がって降りるという、それなりに厳しい昇り降りを持つコースでもある。


スタート地点(県民の浜)から2キロ程度、スロージョギングスピードで走る。
スタートはランナー集団のほぼ中央からだったのだけど、最初の2キロで、ほぼ最後尾となった。
風で身体が冷えていたため、2キロ過ぎても、まだ指先が冷たい。
足のエンジンが掛かってくれていない感じだ。
3キロ前後で汗を薄っすらかき出すと、足が動き出した。
ここからが要注意だ。


身体が温まり出したため、スピードを上げたくなる。
腕の時計を見ては、「まだ早い。まだ速く走ったら駄目だ。」と自分に言い聞かせるのだが、徐々に速く走り出してしまう。
5キロ前後で、左右の足がばらつくような感覚(左右の足を踏み出すリズムが合わなくなる感覚、とでも言うのだろうか)がした。
給水所で水をいただきながら、数十メートル歩いて調整。
その後は、左右の足のリズムが揃うまでスロージョギングでゆるゆる走りをする。


これをすることができたことで、気持ちが、ものすごく落ち着いたようなのだ。
自分で自分の走りをコントロールできる。
足を痛める前に、自分の意志でそれを回避することができる。
それを身体が納得したらしい。


そこからは、昇り降りの時のスピードの凸凹はあるにしても、ほぼキロ6分の一定ペースで走る。
13キロぐらいで、左右の足が前へ出る(地面を叩くことなく)感覚になる。
その感覚になった数キロの間、呼吸、足を含む身体全体が、不思議なほど楽だった。


残り3キロぐらいになった時、また、左右のチグハグ感を覚え、給水しながら、再度、速度調整。
残り1キロを切った頃、遊び心の方が強くなってしまう。
そして、遊んでみようと思う程度の、気持ちと身体の余裕も、20キロを過ぎた時点で持てていた。
そこからは、全速力で走る。
キロ4分半前後のスピードまで上げる。
ゴールに駆け込んだ時、笑った。


2時間5分47秒。
好い一日だった。