カーボンナノチューブ、哀しい宿命 | ”秋山なお”の美粒ブログ

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 カーボンナノチューブ、1980年から1990年にかけて、飯島教授・遠藤教授等によって、発見された。それから、夢のような材料として、この世をにぎわした。銅の20倍の強度、銅の1000倍の導電性、銅の10倍の熱伝導性、と書いてある。この夢のような材料が現実的に使われるのなら、日本はこのような状況にはなっていない。だから、今、現在、カーボンナノチューブに対して、ノーベル賞は付与されていない。

 

 

 どこでも、カーボンナノチューブの図式をみれば、綺麗な六面体の筒が描かれている。3Dキャドを使えば、私でも、その模式は作れる。しかし、それは、最終形であって、現実的には、そうなっていない。もし、もともとの材料の仕様どおりの構造体だけで構成されるなら、樹脂にまぜれば、強度があがり、塗料に混ぜたら、導電性が付与されるから、導電性塗料になり、電池や蓄電池の容量はあがり、液晶パネルや太陽光発電の透明導電膜にもなり、熱電素子として機能すれば、外気温と自分の体温差だけで、スマホが動くことも可能となる。仮にPEEKやポリイミドに混ぜることができれば、逆浸透膜や高速摩耗にも使える。今まで30年、莫大な費用を投資してきた。カーボンナノチューブが、現在、一番使われているのが、電池の導電助剤である。しかし、色々な事故が起きている。EV車が、減衰すれば、カーボンナノチューブの分散液の在庫の山が築かれる。莫大な投資をした工場も、立ちいかなくなる。

 

 

 なぜ、夢のような材料が、そのように、機能しないのか、それは、カーボンナノチューブの生成原理と生成後との矛盾が生じるからである。殆どの関係者は、それは、わかっているが、そのことを明記したものはない。そこに、カーボンナノチューブの哀しい宿命がからんでいるからである。

 

 

 人の誕生は、卵子があって、そこに精子がついて、卵子の中で命が生まれる。それと同じで、カーボンに、どんなに力をかけても、カーボンナノチューブは生まれない。シイタケも、ベースとなる木がなければいくら、シイタケの菌をまいても、シイタケは自生しない。それとおなじように、カーボンナノチューブを自生させるには、母体がいる。それが、基本的に鉄なのである。磁性体をもつ、鉄やコバルトであるが、圧倒的に鉄がおおい。当然に鉄にエネルギーをかけても、鉄は鉄である。そこに、カーボンを含んだ気体が触媒に密着し、そこにつよいエネルギーをかけると、カーボンが鉄に溶け込んで、そこから、カーボンナノチューブが生成するというのが、大まかな生成の仕組みらしい。構成要件としては、鉄(コバルト)+カーボン+高エネルギーということになる。

 

 

 しかし、世の中には、ゆらぎが存在する。どんなものにも誤差がでてくる。したがって、現実の生成時、合成品である以上、高エネルギー場でも、必ず、不均一な場所、強い所と弱い所がでてくる。精製の場が大きくなれば、また、カーボンナノチューブの径が細くなればなるほど、その誤差によるCNT生成の不均一さがでてくる。それが、ロット差と呼ばれる。どんなものにも、ロット差は、必ず存在する。

 

 

 具体的にいえば、鉄触媒から、自生しようとしたCNTが、綺麗な構造体をつくらず、そのまま、ぐしゃっと触媒を包込んでしまい、触媒を含んだアモルファスカーボンを生成することもあるし、途中で、ぐしゃっと、変形することもある。それが、もっとも、CNT解繊を阻害する異物である。その大きさ、固さ、量が、ロット、ロットで変わってくるということになる。私はその異物を暗黒物質と呼んでいるが、それは、公的なものではない。しかし、だれも、それを、特定しない。なぜなら、CNTともども、木っ端微塵に砕いているからである。多くの研究機関は、精製した微量な分散液をもらって、実験しているので、異物がどれほど、関与しているかなど、分からないし、それをどういう風に、分離・除去・解繊できるか、分からない。誰もやっていないからである。

 

 

 CNTは、触媒から一本一本自生していくが、結局、一つ一つでは不安定だから、かなりのまとまりで生成される。それがバンドルと呼ばれている。CNTとして、欲しいのは、そのバンドルの中にある無数のCNT(チューブ)一つ一つであり、それを解していかないと、価値がないものになる。もちろん、空気中ではほぐれないから、何かの溶媒の中でほぐすことになる。それが解繊という言葉になる。解繊、繊維状のものを一本一本ほぐしていく。だから、解繊という言葉は、CNT、それに、CNFを解す時に使う言葉である。ガラス瓶を壁にぶつけて粉々に砕くのが、粉砕、層状になったものを、一枚一枚、はがしていくのが、剥離である。CNTの場合は、解繊で、粉砕したら、アスペクト比のあるチューブとしての価値がなくなってしまう。

 

 

 カーボンナノチューブは、金属触媒から生まれる。鉄の微粒子である。それが、母体となる。カーボンナノチューブは、ある意味、そこから生まれた子供である。生まれる時は必要であるが、一旦、CNTができれば、それが、邪魔な存在となる。離れたくない、離れたくないと、強く最後まで、しがみついている。しかし、CNTにとって、鉄触媒は、邪悪な存在となっている。それを、分離して、除去しなければ、CNTとしての機能は出てこない。下記に、CNTから、分離され、除去された異物な形の顕微鏡写真を載せる。それを見ていると、切なくなってくる。自分から生まれたCNT,それが、四方八方から、外され、あたかも、邪悪な、不気味な形、正しく暗黒物質、夜叉のような形相をしている。

 

 

 もし、それがそのまま、CNT分散液に多量に混ざっていれば、鉄の磁性で、凝集して、それぞれ、安定した凝集体(島)を作る。それがなければ、均質な透明導電膜ができる。それがなければ、電池の正極の導電助剤として機能する。SWCNTの半導体型SWCNTと金属型SWCNTとに分離するためのスタート基材となる。樹脂や塗料、モルタル、コンクリートにも、均一に混ぜられる。

 

 

 CNTの欠損の状態を判断するうえで、よくラマン分光でのG/D比を比較して、欠損のすくないCNT、欠損の多いCNTだと、論ずる人がいる。しかし、それは、ラマン分光測定器の光源が届く範囲での話でしかない。ほんの表面をみて、いいか、悪いか判断している。MWCNTの径は、10ナノ、SWCNTの径は、1から1.5ナノ、バンドルの層からすれば、無限の底なしのように見える。解繊したら、その奥に隠れている異物が、次から次へと出てくる。取っても、取っても、湧き出すハエのように、異物は、出てくる。顕微鏡をのぞくと、きりがないように、感じる。しかし、それも、限界がある。やっと、その闇のトンネルの先が見えた。

 

 

 触媒を粉砕して、粉々にしても、それが、残っている以上、必ず、凝集する。それが、不安定さとなる。がん細胞を破壊しても、その周りにいる正常細胞も破壊される。それと同じように、異物を粉砕したら、同時に、CNTも粉砕される。だから、CNTが自生したら、どこでも、純度を上げるために、ケミカル処理をしている。溶かすか、燃やすしか、方法がない。当然に、膨大なコストがかかる。完全に取れればいいが、バンドルの中に隠されたものは、それでも取れない。かならず、何%は残存する。そうなれば、CNTは、固化してくる。それで、粉砕する。CNTは解繊で、粉砕しては、意味がない。だから、30年間、CNTの用途展開は思ったほど進まない。EV車の効率も頭打ちとなる。

 

 

 寝ている赤子を起こさないように、CNTから異物を分離して、除去しながら、CNTを解繊することが必要になる。母体となった触媒(異物)からCNTを分離して、母体は除去して、CNTを解繊させることが重要になる。どれだけ、実験したかわからない。どれだけ考えたかわからいが、たどり着いたもっとも費用対効果のあるプロセスが、BERYU CNT

異物分離・除去・解繊プロセスという事になった。

 

 

 CNTは、母体となる触媒から生まれる。CNTが出来たら、邪悪のように、その異物は嫌われる。そして、それが排除され、CNTが綺麗に解繊されたら、CNTの機能が発揮される。ある意味、哀しい宿命をCNTは帯びている。世間でCNTとして評価されているものは、その異物ではなく、異物が除去された後のCNTの姿である。現実のCNTは、触媒がケミカル処理されものを、粉砕したものである。だから、評価値と現実の値との乖離が甚だしい。導電性など、銅の1000倍などでない。熱伝導性も銅の10倍などでない。引張強度も銅の20倍などでない。すべてが、ファンタジーである。ただ、異物を限りなく除去して、綺麗に解繊すれば、CNTは素晴らしい材料であることは、間違いない。それは真実である。