グラフェンとカーボンナノチューブ、HP DMRが時代を変える。 | ”秋山なお”の美粒ブログ

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 何十年前から、新しい基材として、ナノカーボンの時代だといわれてきた。しかし、実態は、やはり、パットしない。なぜなら、理想と現実が異なるように、マクロとミクロの挙動が異なるからである。ナノカーボン自身、今現在、この現実社会の中に根を張って、未来を変革するようなものでは、なりえないからである。グラフェンはグラフェン、カーボンナノチューブはカーボンナノチューブとして、厳然と、これも縦割りの機能なのである。

 

 

 幕末、長州は長州で、薩摩は薩摩で、土佐は土佐で、幕末の政治のありようを考えていた。幕末の藩士の思いは、開国、富国強兵、文明開化であった。しかし、長州は長州、薩摩は薩摩で、己が正しいと、相いれない。それを取り持ったのが、坂本龍馬である。まさしく、グラフェンとカーボンナノチューブの関係は、幕末の薩摩と長州との関係に似ている。目標は同じ、しかし、それそれ、決定的な差異がある。なぜ、ナノカーボンが世の進歩の基材になりえないのか、それは、お互いの利点を補完しえないからである。プロセスに、坂本龍馬的な機能とアイデアをもったものが、世界に存在しないからである。

 

グラフェンの機能を列記する。

 

グラフェンは、想像できる中で、最も薄い物質(0.332 nm)

最も広い比表面積を持つ物質 (3000m2/g )

最も強靭な物質(破壊強度>130Gpa)

最も硬い物質(ダイヤモンド以上)

もっとも、伸び曲げができる物質(ヤング率>1000Gpa)

導電性 7.5 x 10^7 S/m

熱伝導率 3000 W/mk

 

 

 カーボンナノチューブも大体似たようなことを書いている。これだけすごいものでも、市場を激変するような、画期的なものは、出てこない。ほぼ、使われているのは、電池の導電助剤だけである。それも、カーボンブラックよりはいいというだけの話である。他はパットしない。それは、なぜか、それは、物性的に、グラフェン面、面でいえば、最大でも数十μ、カーボンナノチューブでいっても、長さは数十μmである。世間では、その一つの面や線のものの物性が素晴らしいと言っている。我々の世界は、パソコンやスマホをとってしても、300mmの世界である。100μmは0.1mmである。つまり、グラフェン面が最低3000枚以上連続しないと、その夢のような機能は使えないのである。3000枚ならべたとする。導電性はでますか、強度はでますか、熱伝導はいいですか、ということになる。答えはNOである。それは、グラフェン面とグラフェン面をつなぐもの、バインダーがないからである。グラフェンと同じような導電性をもった導電性バインダーがありますか、答えは、一つしかない。それは、YESなのである。それが、カーボンナノチューブなのである。

 

 

 日本発のカーボンナノチューブ、うまくいっていますか、ほとんどが、海外に取られてしまった。なぜか、ほとんどが、コストで負けたのである。なぜなら、CNTには製法上、異物(触媒核を内包したアモルファスカーボン凝集体)が無秩序的に存在している。ロットによってもそのバランスが変わる。したがって、それを、CNTとなじませるには、粉砕するしか方法がない。それで、チューブとしての機能が、ばらばらになる。線が点になれば、カーボンブラックと変わりがない。グラフェンもCNTも研究開発的な意味合いでは非常に面白い、ある意味、企業でいえば、株価を上げる手段、会社のコーポレーションIDを上昇させるにはいい材料である。しかし、そこからの収益はでない。もうからないことに、これ以上、投資することはできないと、考える。しかし、ナノカーボンは夢のある商品である。次の戦略を考えると、たけのこのように、また、新規として、この分野にチャレンジしようとする企業がでてくる。韓国や中国で、MWCNTとしてのベンチャー企業として、中小企業がCNT製造でそれなりの規模になった。そうなると、俺も、俺もと、出てくる。しかし、今はよくても、これ以上の発展は、無理である。なぜなら、CNTを粉砕して使っている以上、用途が限定されるからである。グラフェンも、導電性バインダーがなければ、単なる薄い黒鉛で終わるからである。

 

 

 黒鉛はCNTによって剥離されグラフェンとなり、CNTはまた、黒鉛によって解繊される。これが、坂本龍馬的な発想、プロセスである。300層以上の層間をもつ黒鉛、一枚、一枚はがれれば、グラフェンとなる。通常グラフェンといっても10層以下のものを指す場合がおおい、5層前後になれば、世間ではグラフェン、多層グラフェンと呼ぶことがおおい。同時に、システムの中にいれて、乱さないように強いせん断をかけると、黒鉛の層間にCNTがはいり、黒鉛を剥がしていく。そのはがれた黒鉛の層間で、CNTが解繊されていくという塩梅である。一石二鳥、お互いがお互いの機能をもって、剥離と解繊を同時進行させていくという考えである。すでに、それは具現化している。

 

 

 それを機能させるには、CNTを、ある程度、細い空間域、0.09mmのノズルを通過させることが必要である。CNTには異物がある。通常、ぼろぼろにしない限り、0.09mmのノズルなど通過しない。それを、可能にしたのが、DMRというシステム、高圧下(100Mpa)に磁性体球を連続的に並べただけのものである。しかし、USパテントを取得している。日本では、美粒のパテントの請求項の一部となっている。それが、あるから、100Mpa, 1パスで、一般黒鉛が5層以下ぐらいに剥離し、一番廉価なMWCNTでも、解繊している。MWCNTだけの導電性の4倍もの導電性が出ている。原料コストとしては、数千円/kg である。いくらいい材料でも高ければ市場は動かない。それがオンリーワンで、絶対必要なものならしかたがないが、どんなに高くても、1万円以下/kgでないと、費用対効果はでてこない。

 

 

 グラフェンとCNT、その決定的な差は、グラフェンは、面だからガスバリア性がある。しかし、グラフェン自身が自分でグラフェン面をつなぐことはない。自己ネットワーク構造がない。その反面、CNTは、面ではないからガスバリア性はないが、線だから、線と線とが、自立的(電磁力)に結びつき、ネットワーク構造を作る。つまり、CNTは、グラフェンと同じくらい強い導電性をもったバインダーとなるのである。

 

 

 電子顕微鏡で剥離した黒鉛と解繊したCNTがどうなっているのかが識別される。CNTが黒鉛の面に、へばりついているのがわかる。それによって、グラフェン面とグラフェン面とが連結されることになる。これが、坂本龍馬的な、一石二鳥なプロセスとなる。面が機能するから、強度はあがる、導電性もでる。ガスバイア性も機能される。グラフェンとCNTの長所が増幅される構造となる。しかも、安くて、製造プロセスも1パスで終わる。従来のCNT解繊では高圧分散機をつかっても、最低でも5パス以上、10パスはかけている。それが1パスになれば、CO2削減1/10となる。

 

 

 CNTは解繊しなければ、価値はない。しかも、アスペクト比をたもち、チューブ(線)として機能しなければ、ネットワーク構造は起きない。線と線が絡みつなぎあうから、価値がある。格子を作るのが、CNTなのである。しかし、格子だけあっても意味がない。そこにはるガラスや障子紙があって、はじめで、格子が格子として価値をもつ。その障子紙がグラフェンなのである。

 

 

 グラフェンはすごい、CNTはすごい、確かにすごい、しかし、それは、あくまでもミクロの世界で、塗料や分散液状態にしないと、意味がない。樹脂にもコンクリート、モルタルにも混ぜられなければ、価値はない。坂本龍馬は生きていたら、「風立ちぬ、いざ、生きめやも」というかもしれない。ナノカーボンの新しい波が、津波のようにおそいかかってくる。時代は必ず変わる。