彼の実家から戻り
制服をハンガーにかけて、
私服に着替えてから
リビングに戻ると、
彼はソファでくつろいでて、
私を見てふっと笑った。
なんか、それだけで
胸がきゅんてなる。
さっき、彼の実家で
“プロポーズ”って言葉を
聞いてから
まだドキドキが止まらない。
私はそっと彼の隣に座って、
小さな声で言った。
「さっきは…ありがとう」
彼は少し首をかしげて、
「うん?」とだけ言った。
「プロポーズのこと。
すごくびっくりしたけど
……うれしかった。
ご両親の前で、
そんなふうに言ってくれて
胸いっぱいになった」
彼はやさしく私の頭を
ぽんぽんと撫でて、
穏やかな声で言った。
「実はさ、プロポーズのこと
前から両親には話してたんだ」
「えっ、そうなんだ」
私は驚きながらも、
ずっと心にあった疑問を話した。
「でも…私、まだ高校生で。
どうしてそんなふうに、
結婚まで考えられるの?」
彼は私の肩に腕を回して言った。
「たしかに普通に考えたら、
せいかはまだ高校生だし、
“結婚”なんて早いって思う人も
多いと思う。
正直、俺も最初は、
せいかにそんな重い話を
していいのか悩んだよ」
少し間をあけて、
彼はまっすぐ私を見つめて続けた。
「でもね、せいかと過ごす毎日が
すごくあったかくて自然で
仕事で疲れて帰ってきても、
せいかの『おかえり』だけで、
全部癒される。
年齢とか、立場とか、
もちろん周りがどう言うかも
気になるけど
でも俺の中ではもう、
大事にしたい人って気持ちが
ずっと前から決まってたんだ。
だからちゃんと形にしたい
って思ったんだよ」
私が小さく笑いながら
「なんかもう、それって
プロポーズみたいだね」
って言うと、
彼は一瞬きょとんとしたあと、
ふっと目を細めて笑った。
彼が私の手をそっと握って
「まだちゃんとは言わないよ。
でもその日が来たら、
絶対忘れられない日にするから」
ってやさしく
微笑みキスをしてくれた。
ドキドキして、
胸の奥が熱くなった。
初恋の人とこんなふうに
「結婚」なんて言葉を
交わせる日が来るなんて、
正直、思ってもみなかった。
出会ったときは、
ただ憧れで 話しかけるだけで
胸がいっぱいで、
隣を歩ける日が
来ることすら夢みたいだった。
それが今こうして同じ部屋で、
同じ未来の話をしてる。
“私なんかでいいのかな”って、
まだ時々不安になるけど、
彼はいつもまっすぐに言ってくれる。「せいかがいいんだ」って。
初恋が今も続いてる。
それどころかもっと深くなってる。
だからきっと私はこの先も、
初恋の人に何度でも
恋をしていくんだと思う。
彼となら、大丈夫。
そんな気がしてる。
