「前に話してた行列の

ラーメン屋今日行ってみる?」 

彼がそう言ってくれて、

私は思わずパッと顔を上げた。 




 「行く!電車で行く?」 



「いいよ、たまには

電車でデートもいいよね」

って彼が笑った。

 いつも車ばかりの
私たちにとっては、
それだけでちょっとした
小旅行みたいだった。




 駅まで手をつないで歩くのも、
 電車のホームで並ぶのも、
 どこか新鮮でドキドキした。




 でもね、ふと気づくと
彼のことチラチラ
見てる人が結構いた。 




 
背が高くて、
スーツ姿もいつも様に
なってる彼だけど、 
今日みたいにカジュアルな服を
さらっと着こなしてると、
 なんだかいつも以上に目を引く。
 普段からかっこいいのに
なんかドキドキして
つい横顔を何度も
盗み見てしまう。






ラーメン屋さんに
並んでるときも
 店員さんが彼の顔を見て
パッと表情が変わったの
私は見逃さなかった。




なんか、やだな…。
  そんなこと思う自分が、
ちょっぴり子どもっぽくて
またモヤモヤしてしまった。




 
そんな私の気持ちなんて
知らない彼は、
 無邪気な顔で私の手を
ぎゅっと握って、 
「お腹すいた〜」
って笑ってくる。 
その笑顔を見た瞬間、 
さっきまでのたモヤモヤが、
 ふっとなくなった。




 
ラーメンを食べながら、
 「おいしいね」って笑い合って、
  そのあとふたりでプラプラ
雑貨屋さんをのぞいて、
 なんとなく手に取った
おそろいのマグカップ。 
「これ、うちで使おっか」
って彼が言ってくれて、
 それだけでしあわせだった。





雑貨屋さんのお店を出たあと。
 駅へ向かう道を
並んで歩いていたら、
 彼が私の手を引いて、
 ちょっと人通りの
少ない小道に誘ってきた。
 「え、どうしたの?」
って戸惑ってると、
 彼が顔を近づけてきて、
  そのままそっとキス。 




びっくりして
固まった私を見て、
 「ドキドキした?」
 なんてくすっと笑う彼。 
恥ずかしくて目をそらしたら、 
彼は今度おでこに
やさしくキスしてくれた。
 




たくさんの人に見られて、

羨ましがられても、

 「好き」って

言ってくれるのは私だけ。

 そう思えたらちょっとくらい

ヤキモチ妬いちゃう自分も、

 なんだか悪くないなって思えた。