父の日の午後。
玄関のインターホン鳴らすと、
彼のお父さんが出てきて、 
「はーい。せいかちゃん
ようこそ、ようこそ」と、
やさしく笑って迎えてくれた。




リビングに通されると、

お母さんがソファから

やさしく手を振ってくれた。

 「せいかちゃん、いらっしゃい。

お茶、入れるの

手伝ってくれる?」 




「はい、もちろんです」 

私はすぐにキッチンに向かって

用意した。
リビングにお茶を並べて
座りバッグから
プレゼントを取り出した。





「今日は父の日なので
よかったら使ってください」
 と、少し緊張しながら
プレゼントを差し出した。




 「え、父の日?ありがとう。
おーコーヒーの香り、
すごくいいよ。
 それに、このハンカチも、
いい色してるね。
うれしいなぁ」 と
 包装を開けながら、
ひとつひとつ手に取って、
 本当に大切そうに見てくれる姿に
胸がじんとした。 




 「せいかちゃんが
選んでくれたの?」 




「はい。なおやさんとふたりで」




 「そっか。せいかちゃんの
お父さんと昔はよく一緒に
飲んだりしてて、
せいかちゃんの話も
したりして。
こうして今、せいかちゃんから
父の日のプレゼントを
もらえるなんて
なんだか不思議で、うれしいね」 
 そのやさしい言葉に、
胸の奥があたたかくなった。




私の父が亡くなって
もうすぐ2年が経つ。
16歳の夏、
彼と両思いだと分かって
初めて彼とキスして
私は浮かれてた。
そんな夏の日父は亡くなった。




現実を受け止めきれなくて、 
何をどうしたらいいのか
分からなかった私に、 
葬儀のことや手続き、
いろんな場面で
助けてくれたのが、
彼のお父さんだった




彼のお父さんがいなきゃ
父を送りだすことすら
出来なかったと思う。





そして寂しくて辛かった時に
一緒にいてくれたのは
なおやさん。
声を聞きたくて電話した
だけなのにすぐに私を
迎えに来てくれて
そばにいてくれた。





私はみんなに助けられて
今日までこうして
幸せに生きていけていることを
感謝しつつ
これからもみんなのことを
大切にしたいと改めて
思った父の日だった。