週に1回くらいかな。 
「今日は映画観よっか」
ってなる夜がある。 




 私たちのおうち映画デートは
晩ごはんを食べ終わって
片づけもお風呂も
全部終わったあと。 




 「今日はどれにする?」って、 
彼がテレビの前に座って、
 リモコンをぽちぽちしながら
映画を選びはじめる。 



 「この間の続きにする?」 




「うーん…恋愛系もいいけど、
ホラーじゃないやつでお願い」 




「了解。せいか、
ホラー苦手だもんね」 




 私は彼の隣に座って、
 ぎゅっとくっついて
スタンバイ。 
 彼は必ず、ポップコーンか
チョコを用意してくれてて、 
「はい、あーん」
ってしてくるから、 
「あーん」って笑っちゃう。





 映画が始まると、
私は途中で何度も彼を見ちゃう。 
笑ってるときの顔も、
ちょっと真剣な表情も、
 全部、見てるだけで
なんだか安心する。





 「泣いてない?」
って聞かれて、
「……泣いてないもん」
って返したら、
 そっとティッシュを
渡してくれる彼が、
ずるいくらいやさしい。





 映画のラスト、
エンドロールが流れ
はじめる頃には、
 私は自然と彼の肩に
もたれていて、
 彼の手がいつのまにか
私の頭をなでてる。





 「今日の映画、
当たりだったね」 



「うん、すっごくよかった」




そうやって映画の
余韻を分け合って、 最後に
「じゃあ、次はまた週末ね」
って約束する。






歯を磨いたら
ふたりでベッドへ。
恋愛映画を観たあとの夜は、 
心がキュンキュンして、
 彼の腕の中におさまると、
強くぎゅっとしてほしくなる。




「なおやさん、
ぎゅってして」って
お願いすると
おでこにキスしてくれて
何も言わずに
ぎゅーって
抱き締めてくれる。




彼の腕の中におさまると
 ふわっと彼の匂いがした。
 いつものにおい。
 私だけが知ってる彼のにおい。
  どうしてだろう、
すごく安心する。 





 ぴたっとくっついてると
背中をなでてくれる手が、
やさしくて、
心までとけそうになる。 
 「なおやさん、だいすき……」って、
 小さな声でつぶやいたら、
 「知ってるよ」って、
唇にキスしてくれた。 






キュンキュンする
気持ちが止まらない。
 この腕の中が、
私のいちばん落ち着く場所。 
 「ずっとこうしてたいな」って、
心の奥で思った。
 映画よりずっと好きな時間は、
 こうしてギュッてされながら、
 眠りに落ちる前の
この数分かもしれない。