いつもはあんまり
気にしないんだけど、
 今回だけはちょっと、
心がざわついた。 




学校の帰り道、
たまたま話すことになった、
前に私にマウントを
とってきた女子に
こう言われた。




 『ねぇ、聞いたんだけど?
 高校出てすぐ就職なんだって?
 マジで人生詰んでない?
 学歴もスキルも
ないってことでしょ。
 ていうか、将来どうすんの?
 あ、でもさ、
彼氏年上なんだっけ? 
いろいろ面倒見て
もらえるなら楽でいいよね〜。
 なんか、そういうの
羨ましいっていうか
私は無理だわ』





 その言葉が、
胸にぐさっと刺さって
その場は 笑ってごまかしたけど、
1人になった 帰り道、
涙が止まらなかった。




 家に着いて切り替えようと
思ってもできなかった。
彼が仕事から帰ってきて
顔を見た瞬間に、
 こらえてたものが全部あふれて、
 『…ねえ、なおやさん…』って、
 彼の胸にしがみついて
泣いてしまった。 
悔しいのか、悲しいのか、
自分でもよく分からなかった。




彼に理由を話すと、
彼は黙って話を聞いてくれた。
 私の頭を優しくなでながら、
しばらく何も言わずに。




 そして小さな声で、
でもしっかりとこう言った。
 『せいかのことを、
学歴とかで判断する人のほうが、
よっぽどかわいそうだよ。
 俺はせいかが頑張ってるの、
ちゃんと知ってる。
 毎朝早く起きて、
お弁当作って学校行って、
ちゃんと自分で考えて生きてる。
 それだけで、
俺はすごいって思ってる。
 他人に何言われても、
俺がいちばん近くで見てる。
 だから安心して
俺はずっと味方だよ』 




その言葉が、
胸にしみて涙は
しばらく止まらなかったけど、
心は少しあたたかくなった。




『なおやさんありがとう』
って 言ったら、
 彼はぎゅっと私を抱きしめて、
 『誰になんて言われても、
俺がいちばん、
せいかのこと知ってるから』って
もう一度言ってくれた。





泣いてしまった私を、 
責めたり、否定したりしないで、
 受け止めてくれたこと。




彼の『大丈夫だよ』って、
何気ない一言が 
こんなにも支えに
なるんだって知った。
 彼がいてくれて、
本当によかった。