『彼と付き合ってます』
って言葉、
 最初はうれしくて、
ドキドキして、
なんだか特別な響きだった。





 でも最近は、
ちょっと違う気がしてる。 
その言葉だけじゃ、
なんか全然足りない。 





  たとえば、 
お風呂から出たあと、
ドライヤーを
持ってきてくれる彼。
 『風邪ひいちゃうよ』って
言いながら、
 私の髪をふわっと
乾かしてくれる、
あの手のやさしさだったり。





 たとえば、
 スーパーで買い物してるときに、
 『これ、せいかの好き
だったやつじゃん』って、
 私の好きな物ちゃんと
覚えてくれてるとこ。







 たとえば、 
洗濯物をたたんでるとき、 
『明日のお弁当、
なに入るの?』って
聞いてくれる彼の声が、 
なんかうれしかったりして。 





 全部、ほんとに
なんでもない日常なのに、
 そのひとつひとつで
『あ、私たち、
ちゃんと暮らしてるなぁ』
って思う。 






  今の私たちは、
 学校のことも、仕事のことも、
ちょっと落ち込んだ日も、
 ふたりで話したり、
ごはん食べたり、
笑ったりしてる。






 それがすごく安心で、
やさしくて、 
『この人と一緒にいたい』って、
あたりまえに思える。 





『せいか〜、ごはんできた?』




『うん、もうすぐだよ〜。
今日ちょっと味に自信あるよ』



『お、それは楽しみだな。
先にありがとうって言っとく』





 こんな会話が、 
なんか家族みたいだなって思って、
ふふっ♪てなる。





  私、高校生だし、 
なおやさんは15歳も
年上の大人だけど、
 一緒にいることに、
ぜんぜん違和感がなくて。
一緒に居て 落ち着くなんて
素敵すぎる。





こんな私の気持ちをね、
 彼に全部言ったの。
 そしたら彼は、
 何も言わずに私をぎゅっと
抱きしめてくれて、
 『せいかがそばに
いてくれるから俺は
頑張れるんだよ』って
 少し照れた声で、
そう言って少し長めの
キスしてくれた。





 なんでもない日も、
 なにかあった日も、
 こうしてふたりで、
あたたかい気持ちを
重ねていけることが、
 今の私にはいちばん
しあわせなことだなって思う。