お昼にランチを作って、
 ちょっとふざけて言ってみた。 
 『はい、旦那様
ご飯できましたよ』って。
 その瞬間、彼がびっくりした顔で
こっちを見てきた。 




 『え、今旦那様って言った?』




『あっ、ごめんね
ふざけすぎた』って
 笑いながら手を振って、
私は慌てて言い直した。 
 『お泊まりの時に友達に
言われたの。
それ彼氏っていうより
旦那様じゃんって。
 なんかその言葉が頭に
残っちゃって、
つい言ってみたくなっただけ』
そう説明すると、
彼はふっと笑って、 
『悪くないね、それ』って
言ってきた。 




 『せいか、もう一回言って』



『え、また?』




『うん、お願い』




ちょっと照れながら、
私はもう一度言った。
 『…旦那様、ごはんですよ』 
そしたら、
彼が笑いながら私を抱っこして
 くるっと軽く回りながら、
耳元で『せいか、かわいすぎ』って
ささやいた。





 そして彼が言った。
 『今すぐどうこうじゃないけどさ、 
でも、俺せいかと将来、
そうなれたら
いいなって思ってる。
 ずっと一緒に歳を
重ねていきたいなって』
その言葉に、
胸がぎゅっとなった。
涙も出そうだった。




 ふざけて言っただけなのに、
 でもそのふざけがきっかけで、
 彼の本気の想いを
聞けたことがうれしすぎて、
私はなんにも言えなく
なってしまった。






 私はただ、ぎゅっと彼に
しがみついてた。
そしてやっと出た言葉が
『なおやさんありがとう』
だった。