なおやさんって、
ほんと私に甘い。





 朝、雨が降ってると
すぐに『送ってくよ』って
言ってくれるし、
 帰りが遅くなった日なんて、
何も言ってないのに
『迎え行こうか?』って
LINEがくる。




 私がうっかり髪を
濡らしたまま
うとうとしてたら、 
『風邪ひくよ』って言いながら、
ドライヤーを持ってきて
乾かしてくれる。
 その手つきがやさしすぎて、 
髪を乾かしてもらってる
だけで眠くなっちゃう。




 夕飯のおかず、
ちょっと味濃くしちゃった日も
『ん、今日ちょっと
男の子味だね』って笑うだけで、
怒ったりしない。




 私が拗ねても、
 彼はいつも変わらずやさしくて、
 ちょっと笑って、
ぎゅってしてくれる。




『やっぱり、なおやさんって
私に甘いよね』って
彼に言ったら
 彼は私の髪をなでながら、
 すぐに答えなかった。
 ゆっくり時間をかけて
言葉を選ぶみたいに、
 しばらく私の頭をぽんぽんって
優しく叩いてから、 



『甘くなるに決まってるでしょ。
 せいかのことほんとに大事に
したいんだから
 せいかが笑ってくれると、
それだけで俺、
今日一日頑張ってよかったって
思えるんだよ』って
どこまでも彼は優しい。




そんな彼に私は
『なおやさん
そんなこと言うと、
 私もっとわがままに
なっちゃうよ? 』って
返したら




 彼はふっと笑って、
 『いいよ。せいかの
わがままなら、
いくらでも叶えてあげる』って。 
その声がやさしすぎて、
 私はもう、
甘えるしかできなかった。