前回はこちら↓
その後は
片付けに追われた。
片付け終わった頃には
21時をすぎていた。
 
 
 
 
事務のおばさんが私を心配した。
『せいかちゃん、大丈夫?
遅くなっちゃけど』
 
 
 
 
 
『大丈夫ですよ。
明日は休みだし。
父にも遅くなりそうだとは
伝えてあるんで。
じゃあお疲れ様でした』
と私は言った。
 
 
 
 
 
会社をでて歩いていると
『せいかちゃん!』
と呼ばれ振り返った。
彼だった。
『遅いから送ってくよ』と
声をかけてくれた。
 
 
 
 
 
 
『ありがとうございます、
いいんですか?』と
少し戸惑いながら聞くと、
 
 
 
 
 
 
『もちろんだよ。
時間遅いし危ないから』
と彼は答えた。
 
 
 
 
 
車に乗り送ってもらう。
ずっとドキドキしていた。
運転する姿もかっこいい。
 
 
 
 
 
 
車だとあっという間に
自宅近くまで着いてしまった。
あーもうさよならか。
もう少し一緒にいたかったと
思った。
 
 
 
 
 
『送ってくれて
ありがとうございました。
また月曜日ですね。
おやすみなさい』
そう言って、ドアに手をかけたそのとき。
 
 
 
 
 
『せいかちゃん、
さっきのこと
気にならないの?』
彼の低くて優しい声が、
私を引きとめた。
 
 
 
 
『もちろん気になりますよ。
好きってたしかに
言ってましたよね?』
 
 
 
 
『うん。言ったよ』
 
 
 
 
 
もう、このまま
黙ってるのは無理だった。
『この際だから
私言っちゃいますけど、
菅原さんのこと好きです。
だけどわかってます。
奥さんいるし無理だってことも。
ごめんなさいこんなこと、
忘れてください』
必死で笑ってごまかそうとした。
 
 
 
『俺もせいかちゃんのこと
好きだよ』
 
 
 
 
『え、うそでしょ』
 
 
 
 
 
『うそなんかじゃないよ』といい
そう言ったあと、
そっと私の顔に触れて、
キスをしてきた。

一瞬で、頭が真っ白になった。

 
 
 
 
 
『だめですよ』
と私は彼を押しのけて言った。
 
 
 
 
 
 
『嫌だった?キス』
と彼に聞かれ
 
 
 
 
 
 
『...嫌じゃなかった、だけど』
その“だけど”を言い切る前に、
またキスをした。
さっきよりもずっと深く、
熱くて、
苦しくなるくらいの
キスだった。
 
 
 
 
 
 
だめだ。
私、もう諦められない。