前回

 

 マンションから飛び出て、「マウンテンストリート」の住宅街を歩く。十一月。例年であれば、僕の大嫌いな冬が活動し始める準備をしている頃であるが、今年は、寒さを感じない。異常気象がここ数年続いている。異常気象が毎年続くのなら、もうそれは異常ではないのではないか、と疑問を抱く人間もいなくなってきている。

 

 マウンテンストリートは二十三年前に大山市の高台に作られた。つまりは僕と同期といえる。「新」という言葉に弱い両親は、新しい人間として登場した僕の誕生に喜び、喜びついでに、二十三年前は新興住宅地であったこの場所のマンションを購入した。

 

 公園を斜めに抜ける。このルートが団地を抜ける近道だった。

 

 公園の中央に差し掛かったところで、北側の方向に視線をやる。大山市街地を見下ろすことができた。僕は昔から、高層ビルが立ち並ぶ大山市の街並みが不気味で怖かった。今の街は、多くの人が去り、白黒の廃墟の塊のようで好きだ。