一昨日シャンプー時に、それまでハラハラだった頭髪がごっそり抜けました。

 

髪が絡まりお団子状になって、扇風機の風で乾かしながら梳かそうとするとバサバサと塊ごと取れました。

 

直前4日間程、触れないほど頭皮が痛んだのは、脱毛前に細胞が苦しんでいたのだな、と。

 

昔見た、玉三郎のお岩さんをおもいだしました。鏡の前で櫛にからんで抜け落ちる髪に驚きおののく、その姿も上品で美しかったですが凄絶なシーンでした。

 

ブラシの先のどっしりとした真っ黒な髪の塊は、とても不気味で(体から離れた髪の毛や体の一部はなぜもああ気味が悪いものなのでしょう)、覚悟していたものの、血の気がすうっと抜ける、恐ろしい、そして心の底から悲しいことでした。

 

地肌の見える頭頂部は、鏡で直視できません。都合の悪い真実を直視する勇気がありません。(手術後しばらく傷跡を洗いながら見ることができなかった。退院後からだんだん見られるようになった) 時間はかかりますが、ときには目を背けることも許されるよね、と自分を甘やかしています。

 

リンパ球や、手足の痛みの方が日常生活を脅かす辛いことなのですが、髪はより一層闘病など、自分の置かれた異常な事態を思い知らされるからだと思います。

 

事前に用意していたオーガニックコットンのキャップ(患者らしくなります)を被って頭を隠してほっと一息。

目をつぶりながら、ウィッグを付けてみる。被り方が下手でいかにもカツラという感じに、またよよと泣きそうになりました。髪を撫で付けて、まあまあかな、とやっと思えるように。しかし毛が減ってもきつく締め付けられる感じが。 

抜け毛中に、男の子のように短い髪になりましたね、と言われた人が見たら、急なボリュームアップにびっくりしそう。美容院で調整せねば、と焦りました。

 

そういう心配をすると、病気のことを一瞬忘れます。

 

坊主頭を見慣れて、家族に堂々と見せられる日はいつ来るかなあ。