ある日曜日の夕方、サザエさん症候群の主訴である落ち込みと残念な気分で胸がざわつく頃、玄関の呼び鈴にぎくっとして「はい」と返事をした。
玄関ドアを開けると新興宗教の機関誌をもった女性が、サザエさん症候群を完全に克服したかのような笑顔で立っている。そんなことが今までに何度もあった。
わたしは宗教に一切興味がない。日曜日の夕方に宣教活動で家を空けている女性の身の上が少し気になりつつも、機関誌の受けとりを丁重にお断りしてドアを閉める。申し訳ないのだけど・・・。
「騙されてはいけないよ」と心の中で念じる。
今日、日曜日の夕方、また呼び鈴が鳴った。条件反射で「これは居留守を使った方がいい」と、カタツムリのようにアパートの殻のなかでステレオの音量を絞り、居ないふりを装う。もう一度呼び鈴が鳴ったかと思うと、わたしは軽量鉄骨の薄い外壁が守る狭い殻のなかで、さらに身を硬くした。しばらくすると玄関と反対側で紙袋のがさがさという音がして、洗濯機の上になにかが置かれた。宅配業者だった。
限りなく言い訳に近いブルー、な気分の日曜日、ひとり暮らしにも慣れたものだ。時々勘違いを起こしながらも自己防衛をしたり、我ながら立派に生きている。何歳になっても、サザエさん症候群は克服できそうにもないけれど・・・。
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