佐々並のCP(チップ計測器)を通過し、今きた道を戻ります。ぬかるみの登り畦道で、前半相前後していたKさんとスライドし声を掛けました。少し辛そうな顔をしていましたが、関門時間内には佐々並に着けるるでしょう。国道262号に出て、前から来るランナーと3,4名すれ違いましたが、その後は誰も来ません。つまり私は完全に最終グループになってしまったようです。

私の前には2名の若いランナーが走っています。彼等とは佐々並に到着する前から一団となって前後しながら進んで来ました。何となく仲間意識が湧きます。ゼッケンの名前から一人は広島県のY君、二人目は東京都のM君です。脚色の順番もY君が一番元気で、次がM君、そして私です。後ろのランナーがリタイアすると、私が最下位になるかもしませんが、過去にレースで最下位になったことはないので、それも一興です。雨は間断なく降り続け、所々では前から強風が吹き付け、身体は冷え切っています。走り続けられれば良いのですが、足も身体も疲れ、背中の痛みもぶり返して歩きが増えて来るので、余計に寒さを感じるのです。

国道から古道に入り、首切れ地蔵に向かう道もドロドロで靴全体が泥色をしています。途中、崖から勢いよく流れ出している雨水で何度も靴を洗いながら進みます。

県道62号に入って、ここから夏木原まで3km延々と登りが続きます。萩往還250kmの時はここが最終盤の240km辺りで、あそこまで、あそこまでと目標を決めては走りと歩きを繰り返して進んでいましたが、今日も全く同じ状況です。むしろあの時より今日の方が走れていない様な気がして、気持ちが落ち込んでしまいます。それでも前の二人から離されないように頑張って登って行きました。

夏木原エイド(63.1km)に到着したのが13時11分でした。エイドのスタッフから「未だ充分時間がありますから頑張って下さい。」と声をかけられホッとしたのですが、隣でM君に話しかけている別のスタッフが「関門時間まで未だ15分以上ありますよ。」と言っているのが聞こえて、『あれー?、やはり関門時間が設定されているなのかな?我々ランナーは佐々並折り返し以後の正式な関門時間の情報は聞いていないのだが・・?』ただ、先ほどの「未だ15分以上・・」から考えて、ここの関門時間は13時30分だったのだろうか?と、考えながらM君に続いて再スタートしました。私としては、佐々並のスタッフから聞いた『ゴールの制限時間は15時30分頃・・』を唯一の正式情報として走っているのです。途中の関門時間のことは全く頭になかったのですが、この事が後で大きな問題になってしまいます。

Y君、M君の後ろ姿を追って板堂峠を越え、石畳を降りて行きます。雨で濡れた石畳は滑り易く、慎重に降りて行き、天花畑のエイドで最後の給水をします。




自転車でコースを走り回っていたスタッフさんがこのエイドにいて、我々3人の後ろにはランナーがいないようだ、との情報を教えてくれました。これで3人が間違いなく最後尾だと言うことが判りました。2人に続いて再スタートして進んで行くと、前の2人がY字路を間違った方向に走って行くので、大声で教えてあげ、事なきを得ましたが、最後になってコースアウトすると命とりになります。

一の坂ダムからの下りで、私がM君に追い付いて2人でY君を追い掛ける展開で、最後のエイドである瑠璃光寺前の長州苑テントに到着しました。時刻は14時34分。ここからゴールまで4.4kmなので15時30分には充分間に合います。ところが、エイドの年配者スタッフが「ここの関門時間は14時30分なので、ここで終わりです。チップを外して下さい。」と言うではないですか!驚きました。我々ランナーには関門時間の情報は事前に全く教えてくれないのに、急に関門時間だとは!そこで私は「佐々並エイドでは、ゴール時間が15時30分とだけ聞いていたのです。未だ間に合います。」と反論しますが、そのスタッフは聞き入れようとしません。私も何度も「佐々並ではそれしか聞いていないのだから、ここで関門時間だと言うのはおかしい!」と主張し、押し問答になり、別のスタッフが電話で本部に確認する事になりましたが、なかなか電話が繋がらないようです。そうこうしている内に無駄な時間が過ぎて行くので、もうスタッフの言う事は無視してM君と2人で再スタートすることにしました。元々の100 km走での、この場所の関門時間はゴール制限時間の50分前に設定してあったのですから、仮に関門時間を設定するにしても50分前の14時40分でなければおかしいのです。1時間前が制限時間だと言うのは全く納得が行かないし、そもそもランナーに対して佐々並以後の関門時間の正式情報をキッチリ知らせていない事が大会運営としては不備なのです。エイドでもめていた時にちょうどマユちゃんと37eちゃんが応援に駆けつけてくれましたが、私がすぐに走り始めたので、ご主人の運転する車でゴールに先回りして待ってくれることになりました。

私とM君が走り始めた時にはY君は未だエイドに残っていましたが、その後、彼も走り始めた事が後になって判りました。残り52,3分で4.4kmなので、間に合うと思いましたが、信号待ちもあるので一所懸命走りました。M君の方が私より脚色は良いのですが、道がわからないらしくて私に付いて来ています。そして15時16分に山口自動車学校に無事ゴール出来ました。




続いてM君も、しばらくしてY君もゴールして来ました。結果は3人とも完走と認められて、ホッとしました。あのエイドでスタッフの言う事を聞いて止めなくて良かったと、胸を撫で下ろしました。大会運営側も雨の影響で指揮命令系統が崩壊していたのでしょう。私のネットタイム記録は11時間44分41秒で、ビリから3番目でした😅


今回のレースは雨の影響があったとは言え、自分としては非常に苦しんだ走りでした。走力が落ちて来ている上に、練習不足も重なり、足の筋肉も心肺機能もアップアップのランでした。今回が100kmだったら間違いなく途中リタイアしていたでしょう。このコースの厳しさを改めて認識しました。と同時に自分の力の衰えをいやと言うほど感じさせられたレースにもなりました。少し寂しさもありながら・・・

このシリーズはこれで終わります。