「世界獅子舞大会」が横浜BUNTAI で開催されるという情報をいったいどこで見つけたのかは忘れてしまったが、日頃からずっと獅子舞に関心をもっているから自ずと目に入ったのだろう。獅子舞の世界大会といっても、この獅子舞は中華獅子舞にかぎられる。中華獅子舞の世界には競技獅子舞というものがあり、それの世界大会が日本で初めて開催されるというのだから、獅子舞ファンとしてはこれはなにがなんでも観戦しなければならない。

10時開演に間に合うように会場に到着すると、外には看板もなにもなく、情報を知らなければ、ふらりと立ち寄ることもないだろう。チケットは必要なく、入場無料である。BUNTAI という広い会場に観客がどのくらい集まるものなのかもまるで想像がつかなかったが、各チームの応援はいるからそれなりに客席は埋まるようだ。正面のほうが観やすいだろうと思い、まわりにあまり客がいない正面スタンド席の後方に私は座った。開演するとまず、司会の崎見風とリンリンがステージに登場する(私はこのふたりが何者なのかはまったく知らない。)。出場チームがさっそく呼び込まれ、フロアに整列していくのだが、各国、国旗を掲げている。国歌斉唱があり、このあたりはまるでスポーツの世界大会と変わらないのだが、このときには観客も全員起立する。実行委員長のあいさつ、そして、そのあとにはゲストの DJ KOOが登場し、開催宣言をした。
いよいよ競技なのだが、その前に審判団が呼び込まれて入場する。黒ずくめのかっこうをした十数人の審判団がきっちりと一列になって行進してくるさまはなかなか儀式めいていた。そのときに客席の応援団からは歓声もあがり、この審判団たちはスターなのだろうか、われわれ部外者にはわからない競技獅子舞の世界がここからも垣間見える気がした。

競技は2部に分かれていて、第1部は伝統部門である。採点基準が大型ビジョンに映され、10の項目がある。「礼儀」(入退場のマナー)、「主題」(テーマの明確さ)、「形態」(動きの美しさや安定感)、「神態」(獅子の感情表現の豊かさ)、「音楽」(音楽との調和)、「特色」(民族的なスタイル)、「編成」(機材の活用)、「効果」(会場の盛り上がりや芸術的な魅力)、「技巧」(テーマの表現)、「服飾・器材」(衣装や機材の工夫)というのがそれだが、これが各1点、計10点として集計される。けして審判団がおのおのの基準で採点するわけではなく、採点基準は統一され、とても明確なのだ。競技の流れについても、まず準備が10分以内、入場、演舞があり、片づけが5分以内と細かく定められている。
伝統部門の出場チームは4組、その4組を登場順に記しておこう。

神戸華僑総会舞獅隊
神戸南京町龍獅団
横濱中華學院校友會
横浜中華学校校友会国技団

世界大会といっても伝統部門はすべて日本のチームだったのだが、前半2組が神戸、後半2組が横浜のチームとなり、横浜のチームのときには会場の声援がはっきりと大きくなった(一般客が贔屓しているわけではなく、応援団が多くきているということ。)。これもスポーツと同じで、アウェイよりもホームのほうが有利なようだ。この部門では、横浜の2組のほうが良い成績を出した。

第1部が終わったところで長めの昼休憩に入り、午後からは第2部のポール部門が始まる。この休憩時間にフロアにはポールとマットが並べられ、その様子を私はスタンド席から眺めていた。朝の段階では空いていた客席は、この時間になると満席に近くなっていた。
伝統部門はどうやら自由度が高く、演劇的な要素が強いように思えたが、ポール部門はよりスポーツらしく感じられる。こちらも10点満点なのだが、採点基準は3項目のみ、「動作規格」が5点、「芸術表現」が3点、「動作難度」が2点という配分になっている。伝統部門のほうが自由度が高いからこそ、採点基準を細かく設定する必要があるのだろう。
ポール部門の出場チームは8組、その8組も登場順に記しておこう。

香港 潤福堂(香港)洪挙李潤福獅隊
インドネシア 印尼廣肇江夏堂龍獅團
オーストラリア 澳洲振武館龍獅團
シンガポール 新加坡藝威體育會
マレーシア 馬來西亞布特拉再也光藝醒獅體育會
アメリカ 美國三藩市梁館白鶴龍獅團
日本 日本横濱中華學院校友會
台湾 桃園市體育総會龍獅運動委員會(培徳龍獅體育會)

(注:一部、どうしても変換できない漢字をあきらめて略字にしました。)

私は横浜中華街では獅子舞を何度も観ているのだが、アメリカ、オーストラリアのチームはそれぞれ中華街で観る獅子舞と印象はあまり変わらない。それに比べて、アジア各国の獅子舞はなかなか個性的に感じられた。獅子は2名で演じられ、残りのメンバーは楽隊というわけだが、つまり、演舞の対決でもあり、音楽の対決でもある。たとえば、フィギュアスケートなんかではそんなことはないので、演奏とのチームワークの比重が高いところが芸能的であって、私にはとても面白い。インドネシアなんかは最初の音色がガムランのそれで、その美しさにぞくっとさせられた。マレーシアも太鼓の音色に特徴がある。シンガポールは楽隊の衣装がカジュアルというのか、女子学生の制服みたいなかっこうの女性もいて、シンバルを鳴らすときなど、みんなで動作を合わせたりするのが面白かった。中華獅子舞の動きはそもそも愛嬌のあるものだが、かわいいポーズを作ってみせたりなど、アジアのチームには「かわいい」という概念がどうやらきちんと共有されているようだ。
並べられたポールはいずれも2メートルを超える高さで、そのポールの上を獅子はぴょんぴょんと跳び移っていく。香港、オーストラリアのチームのときにはポールから転落する場面があり、この競技の難しさに気づかされもしたのだが、採点には減点もあり、6点台に低く点を落としてしまっていた。転落するとまたそこから戻って再開するのだが、そのときには観客から暖かい拍手が自然と湧き起こった。

客席はピーク時には超満員になっていた。まさか、この横浜BUNTAI が獅子舞で満席になるとは驚かされる。立ち見は禁止されているため、空席をつめてくださいというアナウンスもされるほどだった。すべての競技が終わったあとには、スペシャルゲストの MIGHTY CROWN のライブがあり、フロアにいる出場選手たちもそのライブの観客になるのだが、ライブが始まるとスタンド席の観客たちにもフロアに降りてくるように促し、選手と観客たちが一体となってライブを楽しむ場になった。私はその様子をスタンド席から眺めていたのだが、こんな世界情勢だから、選手たちが振っている各国の国旗がとても素晴らしくいい光景に感じられた。
最後に表彰式があり、各部門、すべての順位が発表され、出場チームすべてが表彰される。伝統部門は横濱中華學院校友會が優勝、このチームはポール部門にも出場していた。日本チームも高得点だったのだが、ポール部門はマレーシアが優勝した。転落した2チーム以外はいずれも高得点の戦いだったのだが、マレーシアの獅子は黒と緑の珍しいカラーリングで、このチームだけは不気味なかっこよさが感じられた。すべて終演したのは18時頃、私もまさか、朝から8時間も獅子舞を観続けることになるとは思わなかった。

インドネシア

シンガポール

マレーシア

日本

MIGHTY CROWN