NHKの朝の連続テレビ小説
『おかえりモネ』(公式サイトはこちら)
にはまっています!
気象予報士をめざすヒロインの話と聞いて、最初はあまり期待せずに見始めたのですが、とってもいいドラマ!
舞台は宮城県、ヒロインのモネこと百音は、気仙沼の海のカキ漁師の実家で育ちながら、東北の震災を経て思うところあって、高校を卒業すると、家を出て、県内の山の森林組合の職員に就職します。
そのために、海の風景、山の風景、それをつなぐ空の映像、と映し出され、映像がとても広がりがあってきれいなのです。
朝からせいせいとした気持ちになります。
そして、林業と牡蠣漁業についても教えてもらえます。
ということを言うと、絵本仲間のおひとりが、
それなら宮城県気仙沼で、「森は海の恋人」活動をされている、畠山重篤さんの本を読んでみては・・・と勧めてくださいました。
不勉強で活動もその方も初耳!
ところが、さっそく何冊か借りてきて読み始めると、おもしろくてもう止まりません。
特に最初にあげた
『汽水の匂いに包まれて』
は、「全国共済水産業協同組合連合会発行『漁業の共済』誌に、2001年から2019年まで連載されたものだそうです。
つまり、震災当日のことも、それをどう乗り越えて行ったかもその時その時に書かれて、最近のことまでわかるのです。
漁船を失うということが、漁師さんにとっていかに魂を失わせるか・・・ということも書かれていて、
ドラマの「りょうちん」のお父さんのことが思い出させられます。
そもそもの本の内容は、畠山さんが、漁業をやっているにもかかわらず、県を超えて、気仙沼に注ぎ込む川の上流の山に植林をする活動を始めることとそれがどうなったかということです。
その活動を名付けて「森は海の恋人」というのです。
ちょうど朝ドラでも、「植樹祭」のことをやっていますよね!
で、実はこの「森は海の恋人」活動については、2007年に中学3年の国語の教科書や小学5年生の社会の教科書にとりあげられたのだそうです。
だから、若い世代の方はごぞんじかもしれませんね!
小学生くらいの方向けの本には、『漁師さんの森づくり』があります。
畠山重篤さんは、1943年生まれで、水産高校卒業後に、家業のカキやホタテの養殖に成功します。
しかし、ある年牡蠣の海が真っ赤に荒れてしまいます。
研究と勉強から、これは上流の木に関係があるのではとつきとめます。
1989年に、そこから、行政の縦割り仕事をのりこえて理解してもらい、「森は海の恋人」を合言葉に、落葉広葉樹林の植林事業を始めます。
そして、そのソースをきちんと求めるために、さまざまな土地に行き、さまざまな研究者の方々にお話を聞きに行きます。
ここでまた、朝ドラのほうで、広葉樹林の材木は安値しかつかないけれど、ナラの木を市内の学童机に提供することで活路を見出す場面がありましたよね!
とてもおもしろいのは、畠山さんたちが、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステーラに行ったときのこと。
サンチャゴ・デ・コンポステーラといえば、英文学などをやった方にはおなじみの、キリスト教巡礼地ですね。
ところが、この本を読んで、この巡礼地のシンボルはホタテということを知りました。
ホタテといえば、気仙沼で畠山さんが養殖に成功したものなのです。
実はサンチャゴ・デ・コンポステーラのあるガリシア海岸は、気仙沼と同じく「リアス式海岸」だったのです。
リアス式海岸とは、川が地形をつくったもので、川と海、つまり淡水と海水が混じる「汽水」という部分に、カキやホタテが育つのだそう。
カキやホタテが健康に育つには、川と、その上流の山の広葉樹林が必要だったのです。
ちなみに、フランスなどのカキは、ある時病気で全滅したのですが、宮城県の種ガキが送られて復活したので、フランスで食べられるカキはなんと「宮城種」なんだそうです。
(朝ドラでモネの妹のみーちゃんが種ガキの研究をしていましたね)
そしてさらに、なぜ戦後たくさん植樹されたスギやヒノキでなく、落葉広葉樹が必要かということもわかってきました。
その腐葉土に含まれる微量の鉄分と、「フルボ酸」というものが結びついて海に運ばれて、植物プランクトンの光合成をつかさどる葉緑素ができるのに必要で、また養分になる窒素やリンを、海にとけている硝酸塩やリン酸から還元して取り出すのにも、鉄が必要なのだそうです。
これは人間の体でいうと、貧血のとき鉄分が必要なのと同じようなことなのだそうです。
血液のヘモグロビンの中の鉄分が、酸素と結びついて、体全身に新鮮な酸素を送るのです。
今コロナで自宅で持つ方も増えた血中酸素飽和濃度を測るパラオキシメーターという指にはさむ器具がありますよね。
血液に酸素が必要なんです。
(ちなみに私、1回かかりつけ医さんが計ってくれたら、100パーセントで、こんな数値見たことないとすごくほめられました・・)
つまり、人間が貧血のとき鉄分が必要なように、海の健康のためにも、鉄分が必要だということがわかってきたのです。
これは、もう理科系苦手な私が、畠山さんの本でなんとか理解しようとしたにわか知識でまちがっているかもしれないので、ぜひ、わかりやすく中学生くらいの方対象に書かれた
『鉄は魔法つかい』という本を読んでくださいませ(これはついに買いました)。
絵本もあります。『山に木を植えました』
これらの成果により、畠山さんは要請されて京都大学フィールド科学教育研究センター社会連携教授になり、学生さんたちの実習などをうけおっておられます。
というようなことがとにかくおもしろい!
朝ドラで、モネの妹「みーちゃん」は大学に進学せずに水産研究所に就職希望ですが、成果をあげれば、このように大学で教えることもできるようになるかもしれません。
(個人的には大学で基礎研究を学んでほしいけど・・・)(←ドラマにいれこみすぎ)
もう一つ、この朝ドラには、震災に被災した若者たちのそれぞれの想いも繊細に描かれています。
これについては、児童文学『フラダン』も思い起こさせられます。
長くなったのではしょりますが、これもとてもおもしろいです!
震災でフラダンスというと『フラガール』という映画が有名ですが(未見です)、それにちなんで、東北で「フラダンス甲子園」というのがあるそうです。
それをめざす男子女子のそれぞれの思いがこれも繊細に描かれ、軽いタッチながら深いお話です。
ここまであげた作品の詳細はこちらを参考にしてくださいね。
7月8日追記・
NHK『おかえりモネ』公式サイトに、「森は海の恋人」活動のことが載りました!