1月31日に、JBBYのオンライン講座、
『ロシアの子どもの本―1920年代から、国際アンデルセン賞画家オレイニコフまで』
を視聴しました。公式サイトはこちらです。
お話はとてもおもしろく、ロシアの絵本は、もともとロシアの口承文学の伝統をひきついで、韻文で書かれている、ということは初めて知りました。
これは、タイの状況と同じです
タイも口承文化から韻文文学の伝統があるので、今も絵本は、散文と同時に韻文で書かれたものも大勢をしめています。
この講座であらためて、ロシアには優れた絵本がたくさんあることを教えていただきました。
児童文学のノーベル賞といわれる国際アンデルセン賞の2018年度受賞者は、ロシアのイーゴリ・オレイニコフです。
実は受賞時点では、日本ではまだほとんど翻訳されていませんでした。
しかし、今は、最初にあげた
『ちいさなタグボートのバラード』
が出版されています
この絵本についての説明で、さらに関心をもったことがあります。
この絵本は、最初の見開きのページで、横に運河と、橋があがっている絵が広がっています。
その中心の遠くに、本の上までまっすぐに煙をあげたタグボートが小さく遠ざかっているところが描かれています。
この水平と垂直の構図が、絵に奥深い立体感をもたらしているというのです。
ほんとうにそうです!
私は学生時代は児童文学の勉強はしていましたが、絵本の勉強はしていませんでした。
この立体の深み、という描き方がおもしろく、もっと絵本の勉強をしたいと、ジェーン・ドゥーナンの
『絵本の絵を読む』
という本を借りてきました。
この中で、翻訳者三人が最後に、ドゥーナンの手法で、日本の絵本の
『とん ことり』
を読み解くという鼎談があります。
1ページごとにくわしく見ていくのがとてもおもしろく、一見そうは思っていなかった林明子さんのこの本が、かなり立体的であることがわかりました。
この『絵本の絵を読む』の中に、「役に立つ用語集」というものがあって、その中に「遠近法」という項目もあり、遠近法には二種類あることを知りました。
ひとつが「線遠近法」。
美術などで習った「一点投視法」でしたっけ?
「1点にあつまる直線(消失点)を用いて、奥行きや距離感を出す手法のこと」
これは、知っていましたが、もう一つ、
「空気遠近法」
というのがあるのを知りました。
これは、「大気の影響で色が変化することを利用して奥行きを表す技法」
だそうです。
つまり、色のつけかたで遠近法を出すというのです。
『とん ことり』の遠近法も、この「空気遠近法」の手法が多いのでした。
オレイニコフの『ちいさなタグボートのバラード』の見開きは、本当に深い奥行きを感じさせられるとともに、タイの絵本は、どちらかというと平面的であると感じながら聴いていました。
それは、タイには近年まで絵画というと「仏教壁画」しかなかったので、それが影響しているのかとシロウト考えでいました。
タイの壁画については、「タイのお寺の壁画の仏様にマスク」という記事を書いて(こちらをクリックください)ご紹介したことがあります。
これは、2006年のThaiBBYのオナーリストに提出された、ウィーラユット・ラートスッウチャイの
『マイヤラープ軍隊を眠らせる』です。
そして、こちらは、1999年にユネスコ野間絵本原画賞を受賞した、プリーダー・パンヤーチャン先生の『みのまわりの木』です。
両者とも、どことなく、仏教壁画の応用を感じているのですが・・・
対して、ロシア絵本ですが、これは講座で紹介された『ビリービンとロシア絵本の黄金時代』です。
これも借りてきましたが、この中には、ほんとうに美しい絵の数々が描かれています。
ロシア絵本の絵は、「西洋絵画の写実主義」「アールヌーボー」「ウィリアム・モリスのアーツアンドクラフツ運動」などの影響があるそうで、なるほど、いわゆる泰西絵画や、モリス派の美しい絵をほうふつとさせるところがありますね。
そしてまた、オレイニコフの『ちいさなタグボートのバラード』も原文は韻文だそうです。
ただ、オレイニコフのほうは、韻文といっても、「詩」に絵をつけているのです。
どうも、ロシア絵本のほうは、韻文といっても「詩」、タイ絵本は韻文は「音を楽しむもの」という感じがします。
こんなふんわりした感想だけでなく、タイ絵本をこれから「空気遠近法」の観点から見ていったり、仏教壁画やタイの美術史などもおりがあったら勉強していきたいと思います。
最後に、これも翻訳出版されたオレイニコフの絵本、『まほうの木』。
これはなかなかシュールなところが、私の好きなショーン・タンみたいです!
オーストラリアのタンさんと似ているところもおもしろいですね。
このブログの本のくわしい情報はこちらからごらんください。