田亀源五郎先生の『君よ知るや南の獄』読んじゃった… | (^o^)<Burn,baby,burn!!

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洋楽の和訳を載せたりたまに映画の感想や『ルポールのドラァグレース』について言及するブログ。更新は不定期、コメントは承認制にしています。


※ゲイエロティックアーティストの田亀源五郎先生のお話なので当然18禁よ♡刺激が強すぎる!田亀先生の沼にハマる気がない(ハマったら抜けらんない)!という方は読まないのよ♡あとネタバレのバレバレよ♡

NHKさん、半期でいいから大河ドラマにしましょう(無理)

田亀先生の記事は以前に書きましたが、いやー、この人は凄いなぁ、ほんとに凄いなぁ。としか言えません。

登場人物とかさらりとした解説とかはググれば出てくるので特に書く必要はないと思います。

あのね、最近ね、比較的新しい田亀作品で、所謂「一般向け」の『僕らの色彩』を読んでたのね。だいぶ前に買ったけど、たまに読み返してんのよね。
主人公の少年の宙くんが、自分が所謂「同性愛者」であることについて、時に悩み、時に驚き、時に喜び、今はわずかな人しか知らない自分の「秘密」を抱えながらこれからの人生を歩んでいく、というお話で、大変読みやすいし、自分のセクシュアリティに関わらず中高生くらいの子に普通にオススメできる作品なわけです。

その『僕らの色彩』は、15歳の頃の田亀先生に向けた作品なのね。

自分を取り巻く世界がインスピレーションを与えてくれ、自分にはそれを絵にする力がある。宙くんは漫画の登場人物だからこれからどう生きていくか分からないけど、大人の階段をひとつひとつ登って行った田亀先生が描いた渾身の力作が『君よ知るや南の獄』なのか、と圧倒されましたな。

短編の『Zenith』とかはもう但し書きにある通りファンタジーだぁ!変態だぁ!(褒めてます)ってキャッキャして読めるんだけど、『君よ知るや南の獄』はなんていうかエロ漫画の域を超えているのよ。そりゃ田亀作品だからエグいエロ表現たっぷりで、人によっちゃ「うわぁ…」ってなるかもしれないけど、田亀ファン的にはもうそういう描写がどうとかこうとかじゃないのよ。この描写がエロくて…とかじゃないの。いや、そういう目的で読んでいい作品なんだけど、私には読めなかった。話が深すぎるもの。

椿中尉よりも、ハワード少佐が切ないのよ。椿中尉の死からずっと50年間、咲かない椿だけを見つめて。

最後の椿の花が咲いてハワード少佐が逝ってしまう描写はちょっとファンタジーというか、幻想的すぎるかなって感じはした。50年間、蕾のひとつもつけなかった椿の花が、わっと咲くわけですから。ハワード少佐だけが見たなら、夢か現か?って感じだけど、その場にいた元部下と記者も見てるからね。せめて一輪か、いや、でも、ハワード少佐の胸の内を思えば、満開の椿でいいんですけどね。

片方は戦勝国の軍のお偉いさんで、片方は敗戦国の捕虜で、でも決して誇りを捨てたわけじゃない人。絶対に愛で結びつくことのない立場にいる2人。だからハワード少佐はああいう行為で椿中尉を手に入れようとするしかなかった、でも椿中尉はそれを受け入れることはできなかった。

50年という長い年月が経ち、偶然と偶然が重なり、誰も口を開こうとしなかった事件の真相が明らかになって、もう「許されていい」と椿中尉はハワード少佐を迎えに来たのか。でも、「現在」にあたる1994年ってそこまで性の多様性に寛容な時代でもないから、「世間に許されるから迎えに来た」わけじゃないよね。そもそも、書いてしまうと軽々しく感じるけど、「愛」って、誰かに許されるとか許されないとかのモノじゃないしね。ハワード少佐があの世に行くから、もういいじゃないか、立場や信念なんかに捉われない世界に行くんだから、と、椿中尉から、あの日に振り払った手を差し伸べたのか。ここは本当に謎です。田亀先生、最後にどーんと解釈の難しい描写を持ってくるのがにくいわー。

男性同士の性交、いうかそれ以上のありとあらゆる性的描写(SM、スカトロ、流血に輪姦にもうなんでもござれ状態)に対抗がなければ是非ご一読を!って感じです。それくらい深い。いやー面白かった。