灯りのない部屋はほんとうに殺風景で、
あなたが見たら、やっぱり眉をひそめるのでしょうか。

 

あいかわらず僕は、ベッドのかわりに寝袋を使っているよ。

 


何も無い、とはいいながら、捨てるかどうか迷っている品がありました。

壊してしまったノートパソンコンが置かれたパソコンラックの上に、
鳥の入っていない鳥かごがあるのです。

それは、皮肉なジョークの込められた、
僕の大学の先輩からいただいたプレゼントでした。

『おまえはかごの中の鳥だ』

陳腐な揶揄の含まれたものだったと想像します。



まじまじとみたことなんてなかったのですが、
部屋を引き払う機会に、
これをどうするか決めなくてはなりません。



タバコに火をつけて、
僕は考えるふりをしました。
ふりをしたのは、どーせ捨ててしまえばいいだけ、
と思っていたからです。


ところが、ふと気になって、
先輩がなぜこの鳥かごをくれたのかを考えてみよう、
と思い直してしまいました。

青サビが浮いたようなあしらいをしていて、
どこでも手に入るような量販品ではないような気がします。


「『おまえはかごの中の鳥』か…」

言ってみて、
僕は少しこめかみのあたりがチクチクするような
感覚を覚えました。


先輩は、大学卒業を待たずして、
映画の世界をこころざし、
東京へ移り住んだ人です。

何かふつーの人とは少し違ったメッセージがあるのではないか、
と思ってしまったのは、僕の勘違いでしょうか。


鳥かごは、
あたりまえですが、鳥が逃げないように、
飼育するための檻です。

入れられた鳥は飛ぶ自由を失いますが、
その反面、えさをもらえて命をつないでゆくことができます。

そもそも鳥が飛ぶことって、
どれぐらい重労働なのでしょうか?

飛べない僕から見たら、
さえぎるもののない空は、
自由の象徴のような気がして、
そこを飛ぶのは、真に清々しいことなのでしょう。

ところが、飛ぶためにはエネルギーが必要です。
そのために食事をしなくてはなりません。

「そーいえば、最近ろくなもの食べてなかったっけ……」

 

…っと、どーでもいいようーな感想が頭に浮かびます。

ちらっと冷蔵庫のほうに目をやりましたが、

たいしたものが入っているわけではないのは知っていました。

 

 

 

煙草をもみ消して、ひとつ息を吐き出します。

部屋の外に目をやると、街のネオンは雨に濡れて、

キラキラと僕の目には眩しいです。

 

 

「朝になったら、雨止むのかな……」

 

誰もいない部屋の暗闇の中へ、僕のひとりごとは吸い込まれていきました。