2019〜20シーズン観戦記2(早稲田vs明治) | 渡る世間にノリツッコミ リターンズ(兼 続日々是鬱々)

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フリーライター江良与一のブログです。主にニュースへの突っ込み、取材のこぼれ話、ラグビー、日常の愚痴を気の向くまま、筆の向くまま書き殴ります。

24年ぶりの全勝対決で、チケットも早々に完売し、観客席は満席というこれ以上ない舞台設定で行われたのが今シーズンの早明戦。ここ最近の両学は、帝京に手も足も出ないという状態で、従って、1980年代後半から1990年代一杯くらいまでチケットを取るのに徹夜で並ばなければならなかった時ほどの「プレミアム感」こそないが、それでも長らく大学ラグビー界を牽引してきた両学が全勝でぶつかるこの試合は、日本ラグビー界の中でも最高峰の試合の一つであると言って良い。

 

その昔はタテの明治にヨコの早稲田、あるいはFWの明治にBKの早稲田、重戦車vs華麗な展開ラグビーなどという「対立軸」で語られるほど両学のプレースタイルは対照的であったのだが、最近では、プレースタイルに明確な違いは無くなってきている。ただ重いだけのFWでは走り負けるし、タテに走れるBKでなければゲインラインは切れない。というわけで、どちらもFW、BK共にバランスの取れたチームに仕上げている。とは言え、随所に両学独自の「伝統」は顔をのぞかせる。明治はFWの個々の選手が力強い突進を繰り返すし、早稲田はできるだけ接触プレーを避けて素早い球回しを志向する。

 

試合はしかし、両学が帝京と当たった時の点数差が如実に反映された結果となった。早稲田vs帝京は34-32の僅差で、試合終了間際の逆転勝ちだったのに対し、明治vs帝京は明治が終始リードし、スコア的にも40-17と圧倒して終わった。この試合のスコアは7-36で明治の勝ち。それも囲碁でいうところの中押し勝ちというやつで、後半開始からはどの局面でも明治の力強さばかりが目立った。レベルの差は格段にあるが、南アフリカとジャパンの対戦をみているようだった。明治はとにかく個々でも集団でもFWが前進する。早稲田は防戦一方で、たまに自軍がボールを得ても、有効なゲインができないまま、ただ左右に球を散らしているだけ、という印象に終始した。そしてちょっとフォロワーが遅れると、すかさず明治がターンオーバー。こういう攻めに攻めていて、時折脇の甘さを見せる、というスタイルは明治の「専売特許」だったはずなのだが、見事なまでに隙がなかった。早稲田はいつも通りのプレーをきちんとしていたのに、明治のプレーの一つ一つがそれを上回っており、多少のミスはミスにしないうちにカバーしきってしまっていた。この辺の厳しさは自らが主将の時には指導者が不在というピンチを乗り越えた経験を持ち、サントリーでも日本一に輝いたことのある田中監督の指導の賜物だろう。少し可愛げがないチームにはなってしまったが(笑)。

 

この試合の結果で、今シーズンの大学日本一の最右翼は明治とはっきり位置づけられた。大学選手権に向けては早稲田、帝京がどこまで修正してくるか、リーグ戦グループを全勝で勝ち上がった東海大の出来は?関西王者天理はどうだ?という興味が湧きはするのだが、どのチームが勝ち上がるにせよ、明治に「挑戦」するという構図は変わらない。9連覇した帝京の出現で、大学ラグビーはステージが一つ上がったように思うが、明治のような伝統校が復活することは、さらにレベルをあげることにつながる。大学の上位チームがトップリーグに挑むという形式の復活を占う上でも、今年の大学選手権は面白くなりそうだ。