ジャパンvsロシア観戦記(TV観戦) | 渡る世間にノリツッコミ リターンズ(兼 続日々是鬱々)

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フリーライター江良与一のブログです。主にニュースへの突っ込み、取材のこぼれ話、ラグビー、日常の愚痴を気の向くまま、筆の向くまま書き殴ります。

今シーズン、ジャパンとしては最後のテストマッチとなる一戦は、来年日本で開催されるラグビーW杯の開幕戦の対戦相手となることが決定しているロシアとの試合。本来なら開幕戦のカードはvsルーマニアとなるはずだったのだが、ルーマニアが国代表となる資格のない選手を出場させたことで失格となり、ロシアが繰り上げ当選した形となった。ルーマニアより世界ランキングは低いし、過去の対戦成績も5勝1敗と大きく勝ち越している相手。本番に向けて選手起用を含め、いろんなことを試そうとした試合でもある。

 

しかしながら、ロシアは実に良くジャパンを研究し、しっかりと対策を練ってきていた。ジャパンに対するロシアのアドヴァンテージはでかい身体とフィジカルの強さ。ジャパンのロシアに対してのそれは敏捷性と持久力。ロシアは自分たちの長所を活かし、ジャパンの優位性を徹底的に消す作戦を取ってきた。密集での飽くなきファイトと、そこからのスクラムハーフのハイパントキックを徹底してきたのだ。また、FW、BK問わず、このハイパントへの対応が実に見事であった。かなりの期間練習を積んできたのだろうと思う。

 

一人一人のフィジカルはロシアの方が優位だが、ジャパンはフィットネスの高さで、その優位性を凌駕することが可能。であるなら下手にボールを散らすより一気にプレーヤーがなだれ込むことのできるハイパントで前進を図る、という戦法がズバリ当たった。ジャパンに攻めさせずに、常に自分たちが主導権を握ることで点数的にも22-10と大きくリードして前半を終了。小うるさいジャパンに好き勝手させないためにはどうしたら良いかを考えに考え、その策を実行するために必要とされるのはどんなことなのかを見極め、しっかり実行してきたゲーム運びは見事というしかない。ジャパンに取ってロシアは「勝って当然」あるいは「勝たねばならぬ相手」だが、ロシアに取ってもジャパンは一番勝てる確率の高い相手なのだ。そこにピークを持ってこられて、この試合の前半のような展開を、試合の全ての時間でやられてしまったら…。ジャパンにとっては最悪のシナリオが展開する可能性がある。

 

後半、ようやくバテたロシアの運動量をジャパンが上回って逆転に成功したが、ヘンドリック・ツイやリーチ・マイケルの個人技によるハプニング的得点に救われた部分もある。ジャパンの志向する展開で取れたトライは後半の一本めに福岡選手が決めたものだけ。ロシアくらいの相手になら、全て理詰めの展開でトライを量産しなければ、ティア1のチームを破ることは難しい。ましてジャパンのプールには、現在世界ランキング2位にして一昨年史上初めてニュージランドを破り、ジャパンには未だ無敗のアイルランド、前回のW杯でジャパンの決勝トーナメント進出を妨げたスコットランド、過去ジャパンに度々牙を剥いてきたサモアというツワモノたちがそろっているのだ。ロシアに手こずるようではこれらのチームには到底叶わない。この試合のロシアが見せた作戦をアイルランド、スコットランドがより精度高く実践してきたら…、考えるだに恐ろしい。

 

今回のテストマッチは負けなかったことだけが収穫。前回大会で、ジャパンの戦法は広く知られたし、世界各国もそれに対する策をしっかりと講じるようになった。世界のそうした進歩をジャパンは上回っているのか?疑問と恐怖心だけが募った一戦だった。