短答の問題を使って論文の学習をしよう | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

資格試験予備校アガルートアカデミーで司法試験・予備試験の講師をしている工藤北斗のブログです。司法試験・予備試験・法科大学院入試に関する情報を発信しています。時々弁理士試験・行政書士試験についても書いています。

昨日総合講義300のフォローゼミを実施しました。

 

司法試験/予備試験の短答過去問を解きながら知識を復習するという形でゼミを行ったのですが,その中で短答の問題を使って論文の学習をしようという話をしました。

 

まぁ,短答学習と論文学習のリンクは司法試験受験界では昔からよく言われている話なのですが,具体的にはどういうことなのか,これを記事にしてみたいと思います。

 

昨日扱った問題の中で,例えば,次の問題は論文学習の格好の素材となります。

 

■司法試験平成26年度民法問題16■

売買契約においてその目的物であるワインを種類のみで指定し,買主の住所で引き渡すこととされていた場合に関する次のアからオまでの各記述のうち,判例の趣旨に照らし誤っているものを組み合わせたものは,後記1から5までのうちどれか。(選択肢は省略)

 

ア.売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したのに,買主がその受領を拒んだ場合には,その後売主がそのワインを故意に滅失させたときであっても,売主は,ワインの引渡債務の不履行を理由とする損害賠償責任を負わない。
イ.売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが,買主がその受領を拒んだ場合において,その後そのワインが保管されていた倉庫が第三者の放火によって焼失し,ワインが滅失したときには,売主は,ワインの引渡債務を免れる。
ウ.売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが,買主がその受領を拒んだ場合において,その後そのワインが買主の過失により滅失したときは,買主は,ワインの代金債務を免れない。
エ.売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが,買主がその受領を拒んだ場合には,その1週間後に売主が買主に対してワインの代金の支払を求めてきたときであっても,買主は,ワインの引渡しとの同時履行の抗弁を主張することができない。
オ.買主があらかじめワインの受領を拒んでいる場合において,売主が弁済の準備をしたことを買主に通知してその受領を催告したときは,売主は,約定の期日に買主の住所にワインを持参しなくても,ワインの引渡債務の不履行を理由とする損害賠償責任を負わない。

 

これを論文の問題に組み替えてみると,次のような形になります。

 

Aは,Bが所有するワイン100本を種類のみで指定し,代金を10万円として,買い受ける旨の契約を締結した(以下「本件売買契約」という。)。本件売買契約においては,Bはワイン100本を契約から1週間後にAの住所で引き渡すこと,その際にAはBに対して代金10万円を支払うこととされていた。
本件売買契約から1週間後,Bは,Aの住所に指定された種類のワイン100本(以下「本件ワイン」という。)を持参したが,Aは受け取りを拒んだ。
以上の事案を前提をして後記[設問1]から[設問3]に答えなさい。なお,各設問は独立した問いである。

 

[設問1]
Bは,本件ワインを持ち帰ったが,受け取りを拒んだAに腹を立て,本件ワインを全て割ってしまった。この場合,Aは,Bに対していかなる請求をすることができるか。(記述ア)

 

[設問2]
Bは,本件ワインを持ち帰ったが,その後本件ワインが保管されていた倉庫が第三者の放火によって焼失し,本件ワインが滅失した。この場合におけるAB間の法律関係について論じなさい。(記述イ+記述ウの変形)

 

[設問3]
Bは,本件ワインを持ち帰った後,本件売買契約にかかるワインの代金を回収しようと思い,Aに対して10万円の支払請求を行った。Aの立場から考えられる反論及びその当否について論じなさい。(記述エ)

 

ちなみに,次の記述は,平成27年予備試験論文式試験民法で類似の事案が出題されています。

 

■予備試験平成26年度民法問題4記述オ■

Aは,A所有の甲土地をBに売却したが,AからBへの所有権移転登記をする前に死亡した。Aの法定相続人は,子C及び子Dの二人であり,その相続分は各2分の1であったが,遺産分割協議が調う前に,Cが勝手に甲土地について単独で相続した旨のAからCへの所有権移転登記をした上,甲土地をEに売却し,CからEへの所有権移転登記をした場合,Bは,Eに対し,2分の1の限度で甲土地の共有持分の取得を主張することができる。

 

わざわざ自分で論文問題に組み替えてみる必要はないのですが,論文で出たらどう書いたらいいのかという頭で短答の問題を解いてみると,論文のよい訓練になるでしょう。ぜひ試してみてください。

 

 

↓各試験に関連するブログはこちらから↓


■個別指導担当講師募集■
現在,アガルートアカデミーでは司法試験合格者で個別指導をご担当頂ける講師の方を募集しています。ご興味がある方はこちらをご参照の上,エントリーをお願いいたします。