【採点実感】論文パーフェクト答練分析編民事系科目第1回 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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資格試験予備校アガルートアカデミーで司法試験・予備試験の講師をしている工藤北斗のブログです。司法試験・予備試験・法科大学院入試に関する情報を発信しています。時々弁理士試験・行政書士試験についても書いています。

【第1問(民法)】
1 設問1について
⑴ 反論①について
・およそ転借人に対する催告の要否の問題であることを理解していない答案がある(ex.解除の不可分性を論じる答案,AC間の権利義務関係や契約関係の存否を論じることに終始する答案,転貸人の負う債務が債務不履行になるか否かを論じる答案)
・合意解除の場面の問題と誤解している答案がある
・541条の要件検討に終始する答案がある
→問題となるのは,少なくともAB間の賃貸借契約について見れば,541条の要件が充足されていることを前提として,この局面において「催告」を契約当事者以外の第三者に対しても行うべきか,あるいは541条の要件に付加した要件(どのような法的性格の要件なのかはさらに問題となりうるが)を要求するかということである

⑵ 反論②について
・転貸借契約の帰趨を論じる答案が多い
 →攻撃防御の構造をよく考えてみること
・Cが545条1項ただし書の「第三者」に当たるか否かを論じる答案があった

⑶ 反論③について
・請求の法的根拠を特定していない答案が相当数ある
・CがBに対して賃料を支払い続けていることをもって,「法律上の原因」がある,「受益(利得)」が無いなどとした答案があるが,6月末日の経過をもって本件賃貸借契約①は消滅しているはずであり,にもかかわらずそのように解することができる説明が必要である
・請求額について,不当利得返還請求を根拠とする以上,まず客観的な賃料が基準となるべきことを指摘できている答案が少ない
・189条に触れられている答案はごく少数

2 設問2について
⑴ 小問⑴について
・明確に問題の所在を掴めている答案は無かった(問題の所在にかすっている答案すらほとんど無し)
・94条2項の類推適用を論じる答案があった
・賃貸人たる地位の移転について論じる答案があった

⑵ 小問⑵について
・設問1反論②の部分で,転貸借契約の終了時期を論じた答案が多かったので,小問⑵で論じることが無くなってしまい,混乱している答案が多かった
・履行不能になれば契約が終了することを当然の前提として論じている答案が多かった
・履行不能とは,物理的な不能だけではなく,社会通念上の不能も含むこと(不能に至る時期は社会通念をもって決すること)を明示できた答案は少なかった
・転貸借契約(転貸人の転借人に対する貸す債務)が履行不能となって終了する時期が,所有者(賃貸人)の明渡請求時であることの論拠として,転貸借契約が原賃貸借契約を基礎にして成立していることを論じる答案が相当数あった
・他人物賃貸借契約と転貸借契約の性質の違いに触れられた答案は無かった

⑶ 小問⑶について
・条文を指摘できた答案は約1割
・295条や533条を指摘した答案があった

3 設問3について
・一種の他人物賃貸借となるにもかかわらず,不法行為を法的根拠としている答案が相当数あった
・時間切れ答案多数
→とりあえず,415条や561条の要件検討さえされていれば,一定の点数になるという印象

【第2問(商法)】
1 設問1について
・株主が不利益を受けるおそれについて,大株主がいないこと,持株比率の下落が小幅にとどまることを論じられた答案はごく少数
・主要目的ルールについてはすべての答案が触れていた
→皆ができている部分で不正確な論述をすると,それだけで他人に大きな差をつけられてしまうので要注意
・多くの答案が,資金調達目的より,支配権維持目的の方が主要目的であると判断していた

2 設問2について
・「重要な」財産の処分の意義については,多くの答案が判例(最判平6.1.20)を踏まえていた
・総資産に占める割合が3%であることを,「重要」性を否定する方向で用いている答案があった
・取締役会決議を欠いた代表取締役の行為の効力について,自説の理由付けを示さない答案があった
→相対的に差をつけられてしまう
・丙の主張適格の問題については,多くの答案が概ね適切に論じられていた

3 設問3について
・423条の要件を検討している答案があった
・任務懈怠の有無について,経営判断原則を適用する答案があった
→裁量性のある業務ではないので,不要
・間接損害が「損害」に含まれるのか,という点について論じていない答案があった

※私の答案に一部不適切な論述がありましたので,後日正式に訂正表をお出しします

【第3問(民事訴訟法)】

1 設問1について
⑴ 小問1について
・条文を指摘する際には,「後段」などの細かいところも正確に
・本問は,どの学説からも結論が変わらないものと思われるが,それでも簡単に自説の内容と理由付けを示してほしい
・承継原因について論じている答案があるが,本問では不要

⑵ 小問⑵について
・見解①~③の特徴を掴めていない答案が多い(ex.見解③は引受申立人が自身の請求を引き継がせることを意図した見解である,見解②は訴訟物が承継されたことを根拠とする見解である)
→基本知識と現場思考力の双方で差がついた印象

⑶ 小問⑶について
・譲渡人の利益と譲受人の不利益の内容を把握できている答案がほとんどなかった(特に,譲受人の不利益)
・条文の文言に触れ,訴訟承継の趣旨から,一定の論述を行っている答案が多く,守りの答案を書けている印象


2 設問2について
⑴ 小問⑴について
・主張①を裁判上の自白であるとしている答案が相当数あった
・主張②を裁判上の自白ではなく,理由付否認であるとする答案も相当数あった
→基礎的な要件事実論の学習が足りていない印象
・主張④の取扱いについて,固有の抗弁の問題と勘違いしている答案があった

⑵ 小問⑵について
・問題の所在を把握できていない答案が多い
→当然のように,訴訟判決・本案判決を下すべきであるとする答案が多い

⑶ 小問⑶について
・時間切れのためか,相殺の抗弁の既判力の生じ方について,問題点を指摘できている答案は無かった
・AB間の代金支払請求権の50万円の不存在について既判力が生じることを指摘していない答案が多い