『民事訴訟法から考える要件事実(第2版)』 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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民事訴訟法から考える要件事実(第2版)』(和田吉弘)

☆司法試験向き度→5/5点
☆予備試験向き度→5/5点
☆法科入試向き度→4/5点

要件事実論の入門書。事実認定論の基礎についても若干触れられている。

本ブログでも本書の第1版を何度か紹介したことがあったが,その第2版。「新問題研究要件事実」に対応している。

本書の特徴は大きく分けて2つ。
1つは,書名にもあるように,民事訴訟法と要件事実論の往復学習が可能である点。
要件事実論関係の書籍は,司法研修所のものも含め多数存在するが,いきなり要件事実論の説明から入るものが多く,民事訴訟法しか学習していない要件事実論初学者にとって,とっつきにくさがあった。
一方で,最近の民事訴訟法の教科書には,要件事実論に触れられているものも増えてきたが,今度はその説明が導入部分に限られてしまい,本格的な学習を開始するためには物足りなさが否めなかった。
本書は,民事訴訟法側から要件事実論を眺めることが可能となるように工夫がなされているだけではなく,要件事実論の入門学習として必要にして十分な記述がなされている。

もう1つは,要件事実論の難解な概念について,図表入りでわかりやすく解説されている点。
例えば,司法研修所の貸借型理論に関する見解の変化は有名な話ではあるが,この問題を要件事実論初学者向けにわかりやすく解説した書籍はまだ公刊されていないように思う。
本書では,この問題について,売買との比較の観点から,図表を用いてわかりやすく解説がなされている(124頁)。

本書は,要件事実論の入門書ではあるが,上記のような特徴から民事訴訟法の理解にも有益である。
要件事実論初学者(特に,入門講座において民事訴訟法の学修を終えた方)だけではなく,どうしても民事訴訟法が得意になれない受験生にもオススメしたい。
もちろん,一通り要件事実論を学修した者が,理解の確認や復習のために用いるのも良い。

なお,和田先生による民事訴訟法の教科書として『基礎からわかる民事訴訟法』があるが,こちらも大変オススメ。