『商事関係訴訟(改訂版)』 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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商事関係訴訟(改訂版)』(西岡清一郎=大門匡)

☆司法試験向き度→4/5点
☆予備試験向き度→2/5点
☆法科入試向き度→2/5点

商事関係訴訟に携わる裁判実務家による解説書。

記述は,裁判例を中心として客観的かつコンパクト。

教科書ではないので,網羅的に知識が記述されているわけではないが,司法試験受験の観点から必要と思われる論点はほぼカバーしている。

また,若干実務チックすぎる部分はあるが(もともと学生向けに編まれた本ではない),通常の教科書等にはあまり記述されていない知識ではありながら,司法試験受験の観点から重要であると思われるものが豊富に記載されている。

例えば,平成25年度司法試験で問われた取締役の報酬に関連する知識として,退職慰労金について,株主総会の決議がない場合,あるいは委任された取締役会の決議がない場合の救済方法は,重要論点であり,この点に関する(裁)判例も多数に上るが,代表的な教科書である『株式会社法(第4版)』(江頭憲治郎)には,脚注に若干の記述があるのみである。
これに対して本書では,この点について数十ページを割いて詳細に解説している。

より詳細な商事関係訴訟の解説書として,『類型別会社訴訟ⅠⅡ(第3版)』があるが,かなりの大部であって,さすがに受験向きではないだろう。

そのような意味で,本書は司法試験受験の観点から使い勝手のいい1冊であるといえる。

ただし,ややマニアックなので,予備試験や法科大学院入試を考えている受験生にとっては,オーバースペックだろう。