『民法とつながる商法総則・商行為法』 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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民法とつながる商法総則・商行為法』(北居功=高田晴人編)

☆司法試験向き度→3/5点
☆予備試験向き度→3/5点
☆法科入試向き度→3/5点

民法学者と商法学者による商法総則・商行為法の解説書。

本書が斬新なのは,タイトルにも見られるように商法総則・商行為法と民法の接続を図る試みを行っている点。従来の商法総則・商行為法の教科書では,商法が民法の特別法でありながら,民法との異同を明確に意識した記述はあまり見られなかった。

中でもオススメは,第12講の商事売買。旧司法試験では複数回の出題があり,予備試験でもすでに出題がなされている重要分野であるが,民法570条の瑕疵担保責任との関係は整理・理解が大変難しい。同講は,この分野の整理・理解の一助になることだろう。

ただし,共著ゆえにやむを得ないのかもしれないが,中には民法との「つながり」を意識をあまり意識していない執筆者も存在する。

(新)司法試験の世界では,商法総則・商行為はマイナー分野とされ,もっぱら短答式対策に追いやられているが,旧司法試験や予備試験の論文式試験で出題がなされている以上,(新)司法試験の論文式試験で出題がなされないとは限らない。とはいえ,出題可能性がある分野は限られていると思われる以上,そこまで対策に時間を割くことはできない。

そこで,出題可能性が高い分野に絞って本書を用い,論文対策を講じるのがよいと思う。

その意味で,本書は教科書として利用するのではなく,論文問題を解く過程で生じた疑問を解消するためのツール(辞書)として利用するのが良いだろう。

なお,商法総則・商行為法のオススメ教科書は『商法総則講義(第3版)』『商行為法講義(第3版)』(森本滋ほか)。

より簡易な教科書として『商法総則・商行為法(第6版)』(近藤光男)がある。