『基礎からわかる民事訴訟法』(和田吉弘)
☆司法試験向き度→4/5点
☆予備試験向き度→4/5点
☆法科入試向き度→4/5点
和田先生による民事訴訟法の教科書。
実務と学説,そして司法試験にも精通する和田先生ならではの一冊。
まず特筆すべきは,記述の分かりやすさ。
例えば,訴訟物理論,弁論主義,既判力といった,理解が難しくどうにもイメージの掴みにくかった概念が,具体例や図表を交えながら非常にクリアに説明されている(一例として,所有権に基づく明渡請求の場合,所有権の存否について既判力が生じないことにつき449頁。)。
次に,学説の記述の豊富さが挙げられる。
この手のわかりやすさを売りにしている教科書類では,たいてい論点や学説についての記述が薄く,概略を掴むには適しているものの,難解な論点の理解には十分ではないことが多い(その典型例が『講義民事訴訟(第2版)』(藤田広美))。その点において,このテキストは類書にない特徴を有しているといえる。
やや値段が張るのが玉にキズだが,個人的にはかなりのヒット作。
『講義民事訴訟(第2版)』に代わるテキストになるだろう。
なお,和田先生による民事執行法・民事保全法の教科書として『基礎からわかる民事執行法・民事保全法(第2版)』がある。こちらもオススメ。