朝3時40分
デスクのecho show8からサウンドが流れる
FINAL FANTASY 7クリスタルテーマ
優しい琴の音色
オレを眠りから優しく呼び起こす
ベッドの中でff7を聞きながら一日が始まる
いや、本当は30分前から目は覚めているのだ
予定の時間より30分早く起きると
その日の夜は30分早く眠くなる
毎日の生活リズムが狂ってしまう
だからベッドから出ずに
敢えて定刻の3時40分までじっとしてるのだ
何事もリズムが大事
仕事のペース、人との会話
製図スピード、ゴルフスイング
人生はリズムに集約するのだ
寝る時間と起きる時間
オレは自らのルールに従う
まるで精密機器のように
起きた瞬間
オレの心はワクワクで爆発しそうになる
朝ウォーキング
心と身体の規律こそ人生の基盤
ウォーキングは人生の充実させる
朝から重戦車のように歩く
オレは布団から飛び起きると洗面所へダッシュ
軽く喉をうがいした後コップ1杯の水を飲む
ワクワクしながらウォーキングスタイルへ着替える
ipodを耳につけ
ナイキのグローブをはめる
アディダスのマスクを装着
MELLELLのシューズを履いたら
勢いよく外へ飛び出す
ああワクワクが止まらない
オレは歩く 歩きたいっ!
真冬の早朝オレは歩きたいんだ!
4時
自宅を出発
外は真っ暗闇
人通りはほとんどない
たまに歩いてるのは
朝まで飲み明かした千鳥足サラリーマン
空き缶を大量に抱えた浮浪者
人生の貴重な時間を捨てた敗残者たち
俗世間の沈殿物である
目をそむけたくなる
しかしオレは敢えて
沈殿物の脇スレスレをかすめて歩く
接触しそうなほどギリギリに猛烈な速足で
彼ら周辺のよどんだ空気をブッタ切るんだ
ひっ
軽く悲鳴を上げる沈殿物
オレはますます気持ちが高揚する
加速度全開のスバルのフォレスターに乗って
整備不良の車を次々と追い越していく感覚
これ見よがしに
オレの高回転マシン性能を沈殿物に見せつける
オレの住む場所は俗世間とは無縁だ
そもそも住む世界が違うのだ
見える景色が違うのだ
沈殿物に興味はないし関わらない
沈殿物もオレに関わることができない
寸分たりともオレに触れることはできない
沈殿物は自らを沈殿物と知ることはない
沈殿物のまま一生を終えるのだろう
沈殿物の遥か頭上には澄んだ水が浮かぶ
蒸留された不純物のない蒸留水
燦然と浮かぶ巨大白色恒星
シン・ソンチョル
オレは蒸留水でありシリウスだ
でもまだまだ未完の蒸留水
さらに不純物を取り除きたい
まだまだ自らを蒸留し続けたいのだ
4時40分
歩き始めて40分経過
折り返し地点の橋を渡る
冷たい暗闇に浮かぶ川を眺めオレはスピードUPする
この時間になると「同士」の姿がチラホラ現れる
走る者、歩く者、体操をする者
シャドーボクシングをする者
いずれも朝から
己の心身を蒸留させる我が同士
互いに挨拶は交わさない
目も合わせない
名前も知らない
でも心ではちゃんと通じ合ってるんだ
オレたちサイコーだなって
4時50分
歩き始めて50分経過
ウォーキングは佳境へ
あと少しで自宅に到着だ
その前にオレには立ち寄るべき場所がある
セブンイレブン
ここに立ち寄るのがいつものルーティン
店内にはいつもの女子アルバイトがいる
歳の頃なら30代後半
色白で髪は長くふっくら感
人妻かシンママか
こんなに朝早くから仕事をしてるのだから
独身なのかもしれない
客がいない朝の店内で
いつも健気に掃除をする30代女子
オレに気づくと
「いらっしゃいませ」
大人の雰囲気が漂いつつも明るく丁寧な笑顔
オレは女子のいるカウンターへむかう
冬装備のアディダスのマスクを外す
女子から漂うほんのりとしたボディーソープの香り
これはデオコ
みんなが大好きな香り
おじさんたちも大好き
もちろんオレも大好き
デオコは
コンクリートジャングルで戦う男への晩餐歌だ
ここまで50分歩き続けたオレの疲労感は
この笑顔とボディーソープの香りで癒される
オレは落ち着いた声でこう告げる
ブラックコーヒーください
「ブラックかしこまりました」
オレは毎日この店で
この女子にブラックコーヒーを注文する
女子もオレが常連であることに気づいているはず
まだ3日目だが
そうだ
明日から注文を変えてみよう
いつものやつください
まあそれはもう少し先にするか
あせることはない
「ありがとうござました」
30代女子からカップをもらいコーヒーを注ぐ
店を出るオレ
オレのウォーキングスタイルに
女子はきっとホレてるだろう
1時間のウォーキングに満足し自宅へ向かう
この満足感はウォーキングだけでは達成されない
セブンイレブンあってこその満足感だ
自宅に到着してコーヒーをゆっくり飲む
引き立ての香ばしい香りが漂い
カフェインが体の隅々にいきわたり
オレはすこしづつ高揚する
コーヒーの香りとデオコスメルが入りまじり
オレはさらなる絶頂へと高揚する
ああ今日も一日頑張れるぞ
オレこそが最高でありオレこそが頂点であり
オレこそが至高である
巨星シリウスのシン・ソンチョル
だれにも負ける気がしない
そう
負けるわけがない!
煩悩や欲望を振り払い
心と身体の正しいリズム
道徳の塊
よおし
明日もウォーキングへ行くぞ
さらにストイックに挑み続けるぞ
(おしまい)








