私はこの時まで知らなかったのですが、

 

・本当は二世帯住宅にする予定で弟が家を建てたこと
・そのせいか、土地だけでなく建物の費用の半分を父が支払ったこと
・家を建てる前に弟と家族が住んでいた仮の住まいの費用も全額負担していたこと
・その頃からつい最近まで光熱費はまとめて両親が払っていたこと

 

などなど、「それは世に言う生前贈与では?」という額が、知らぬ間に弟にだけ渡っていたことが発覚しました。

発覚したというより、妹がために溜め込んで来た怒りとともに一気に暴露したのです。

 

「なんで祐ちゃんばっかり」

 

ところが妹の追求が急所に命中したのか、母はこれに対して

「だってあんたたちは家族じゃないでしょ!」

と、渾身の一撃で抵抗してきました。

 

「家族じゃない」

 

これは私たちにとって、なかなかのパワーワードでした。

いつか自分が言うことはあっても、母から言われるとは想像もしなかった言葉だったからです。

 

もちろん、母は「夫婦の配偶関係や 親子・兄弟の血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」(広辞苑より)としての家族関係を否定したわけではないでしょう。

おそらく、直系家族<うちの苗字、家を継ぎ、親と同居する家族>ではない、ということを言いたかったのだろうと思います。

 

「うちを継ぐのは祐介なんだから、いずれは全部祐介のものになるのは当然。その一部をあげていいかどうかを気にするのは当たり前でしょ」というわけでです真顔

 

要は私たち娘はほかの家に嫁いでいくのだから、うちの家の人間ではない、ということでしょう。

 

ただ、私はバツイチです。

この日は、離婚してから初めて、それこそ満を持しての帰省でした。

 

「私、離婚して苗字戻ったけど」

 

そう返して「屁理屈言うな」と一蹴されたせいか、余計に「家を継ぐ」ってなに? と、応戦せずにはいられませんでした。

農業をやめ、父も弟も働きに出ているサラリーマン。

引き継ぐ家業があるわけではありません。

母は「お墓を守ってもらう」と、苦し紛れに言っていたけれど、そんなの遠方に住む私にもできるし、近くに住んでいる妹ならなおさらです。

 

うちでは昔から、なんの疑問もなく、男子=“家を継ぐ者”として大事にされていました。

また改めて書きたいと思いますが、この扱いの差は凄まじかった。

 

でも、そもそも家を継ぐって、親からすれば自分たちの老後のために子どもに投資(家や土地、お金などで)して囲うって話なのではないかと思うんです(もちろん、家業のある人はまた別の話になると思うけど)。

だとしたら、妹のほうがアテになることはこの時点で明白でした。

 

それでも、うちの家族、特に母の“男子”に対する期待は何にも変えられないようでした。

 

地元に戻るつもりのなかった私からすると、正直土地問題とかはどうでもいい。

妹は可愛いので、彼女には損をしないで欲しいとは思うけど、私にとっては出たくて出た家です。

 

ただ、私を家から遠ざけたのもまた、まさにうちの“男子第一主義”でした。

 

だからこそ、この時の「家族じゃない」は、私には一生忘れられないひと言になってしまいました。

 

父の不倫でうちの男子たちがいかに母を守ってくれない存在だったかが露呈しました。

それでも、母はいまだに、私たちよりも彼らが大事なようです。

まあ、その守ってくれない男子たちを作り上げてしまったのもまた、母ですからね……。

 

あの時の言葉を、母は今、どう思い返すでしょうか。

きっともう、忘れてしまっているのかな……。