ちょっと話が脱線しますが、数年前に、久しぶりに実家に帰った時のことです。
夕食を食べていると、庭の方から車が入ってくる音が聞こえてきました。
「祐介が帰ってきたから挨拶してきて」
母はごく自然に、私にそう投げかけました。
弟・祐介は、実家の敷地内に家を建てて、家族で生活しています。
その日は仕事で遅くなったのか、すでに23時をまわっていました。
「なんで私がわざわざ祐介に挨拶に行くわけ? 向こうからくればいいんじゃん」
私が帰ってきたからといって、「姉ちゃんおかえり」と弟から顔を見に来ることなどありません。
そもそも二世帯住宅というわけでもなく、ましてや深夜に、食事中の箸を止めてわざわざ出ていって「ただいま帰りました」と弟に挨拶するのも変な話です。
私のほうが年長者だからとかそういうことではく、家族なんだし、もちろん挨拶したっていい。ただ、なぜ弟を“家長”的に扱ったのか、母の態度に違和感を覚えて思わず反発してしまいました。
私が帰省するからとわざわざ実家に泊まりに来ていた妹も、「ほんと、なんで祐ちゃんだけ特別扱いするわけ? この前もさ…」と、「待ってました」と言わんばかりに同調してきます。
「裏の畑の土地をもらって家を建てたいって言ったの。そしたらお母さん、『祐介が嫌がってるからダメ』って言うんだよ。『お隣りさんが土地を売りに出してるから、それを買えば』だって」
私が大学生の頃まで、うちは農家でした。
かつては畑だった土地が現在は使われないまま放置されており、妹はそこに自分たちの家を建てたいと両親に相談していたのです。
すぐそこにあまっている土地がある。
なのにそのすぐ横の土地をわざわざ買えとは、ずいぶんひどい話だなと思いました。
妹は結婚後、実家がある市内のアパートを借り、家族で暮らしています。
当時、上の子が小学生に上がる前に定住の地を決めたいと、家を建てる計画をし始めた頃でした。
でもそれを阻んでいたのは土地の所有者である父ではなく弟だと、この時初めて知ったのです。
「そもそもなんで、祐介の承諾が必要なわけ? 自分はもう土地もらって家を建てたんだし、関係なくない?」
娘2人vs.母。
会話は次第にヒートアップしていきました。