「字が悪い」だの「五行がどうの」
直ぐに言う亡母に対し、亡父はその手に反応しなかった。
(ふぅ~ん)といった感じであった。
興味がなかった、言っていい。
だから瞬間、真面真面と見て
「俺のは、旅行運が悪い」
一言だけ言ったのを聞いた時には、意外な気がした。
実印だと思う。何かの折に取り出し、彫り面(?)にしげしげと感想を
漏らしたのだ。
故郷(くに)から出てきた頃に作ったのか?社会人になる寸前か?
結婚前後に、こしらえたのか?
経緯は知らないが、かなり古そうな色合いだ。
手彫りであろう。
旅行運が悪い=普通の勤め人であったから、旅行には転勤先。
レジャーとしての旅と同時に、辞令先の明暗も考えなくはなかっただろう。
心配するに及ばなかったと思うが、ひょっとして思い込み。
過去の回想。
何かの本で何となく調べたり、友人関係で詳しいのがいて
「まずいかも」
いわれたのが廻っていたのかも知れない。
わたしも実印を持っているが、調べる気さえサラサラない。