「黒いドレスの女」
なんてのもあったけど、「耳に黒子のある女」
どうですか、ミステリアスでせう。
なかなかにしていい感じ。
そんな女の一人が、わたしだ。

正確に言うと、耳朶に。
右耳の耳朶、中央より一寸、外れた場所にちょこんとついている。
耳のとば口、目で見える範囲にもあるかも知れない。
それと、右目の瞳の中央にもある。
口の横にもありますな。
後、バタバタと……あっ、いや、これはシミか。悲しいわ。

占いによると、耳に黒子があるのは吉兆の証し。
幸せになれるんだとか。どうだろう、どうでせうな。
特に持病も何もなく、入院を要するような事故や病気も一度もない。

目の中に黒子。
超天才か、困ったちゃんかであるようだ。
天才ちゃんを望むけど、周りが違うと言うだろう。
そうか、バカボンさんと同類か。
「元祖天才」枕詞についている。=天才というものだ。

「あっ、眼の中に黒子がある」
指摘されたのは、小学生の頃。
「大丈夫?」だの「痛くない?」だの。
声が掛かって大変だった。
瞳の色が薄茶色い。
黒子が黒くて目立つから、余計、痛々しいのであろう。
「はぁ」
鏡を見る度、分かっていたから、本人はどうでもいいような返事を
返して終わりである。
「面白いよね」
「あまりない」
どれ、どれ、どれと囲むように、見られて閉口したものだ。

三島由紀夫の「美徳のよろめき」。
主人公・節子の友人の一人が、「黒子を見つけて驚いた」と
いう件(くだり)がある。「木苺」だったか「野苺」だったか。
「みたいな」という表現が、誠に印象的だった。
「雀の涙のその半分」
「米粒みたいな大きさの」
残念ながらの、わたしの耳朶の黒子の大きさなのである。
昔はもっと、大きく黒いような気がしたけれどー、段々、薄幸に
近づいているって、か?
そしたらいいや、うすいのさっちー。
「おじゃる丸」に出て来る、28歳独身の漫画家めざす登場人物の
影武者として生活するんだもんねぇ~。
しかししそれには、髪を長くし、ピンクのドレスを普段着とし、
茶色いブーツを履いて外出しなければいけませんなぁ。
とてもじゃないが、勇気がない。

演歌の女王・美空ひばりは、掌の真ん中に黒子があり、力士の
大鵬幸喜も同じくあったという。
「出世するって、ママが言ったわ」
対談でひばりが喜んでいうけれど、いわゆるスター何とか黒子で
あるらしい。
「書けばでるんですよ、手相って」
だったら出世したい人は、これから毎日毎晩、暫くマジックで掌の
中央に黒点を書きませう。

わたしもこれから耳朶の中央に、マジックで書き、全うな黒子の
位置の復活、曰くは幸せを願おうかしら?
宝くじの当選(高額)がいいわねん。