これは、2度読み必須!!
こんな複雑なストーリーをよく思いついたよなあ、と感心した。
住宅メーカー部長職にある54歳の男性が、
ある日突然、SNSで女子大生殺人事件の犯人に仕立てられてしまう。
物語は、この男性、SNSを最初に拡散させてしまった大学生、
男性の娘、刑事の4人の視点で交互に語られる。
「この人が犯人です!」と顔写真も、職場も自宅もさらされてしまい、
逃亡を余儀なくされる男性。
我こそが見つけ出して「私刑」してやろうとする人。
適当な感想をのっけてリツイートする人。
自分は悪くない、という立場から気軽にリツイートする人たちが
どんどんふくれあがっていく。
ネット社会の適当さ、それゆえの恐ろしさがよく描かれている。
それ以上に、非常に心に残ったのが、
主人公の男性が、かつて娘に関して発生したある事件について、
どうしていいかわからず、
ただただ娘に激怒して暗い倉庫に娘を閉じ込めた、
というくだり。
当時はただ娘に腹を立てていたが、
今回、こうしたとんでもない事件に巻き込まれて
当時のことを思い出す。
問題の本質を誰かのせいということにしてしまえば、
それ以上考える余地がなくなって楽になるからだ。(中略)
本当に反省すべきだったのは、どうやったらお前を守ることができたのか、
対処の方法がよくわからない問題に対して怯えて考えることを放棄してしまった、
罪深いこの俺だ。
子育てしていると、
正解はどっちなのか、自分はなぜ子どもに腹を立てているのか、
どのように話を持っていけばよいか
わからなくなることが非常に多い。
私は子育て向いてないなあと泣きそうになるのだけれど、
向いてない、と考えることを放棄しているかも、
と、どきりとさせられた。
本作はネットの怖さをつきつけるとともに、
対処の難しい問題に直面した際に、しっかりと本筋を見失わず
考えないといけないよな、と深いことまで考えさせられた。
これは、子育てと関係なく、誰もが思い当たることがあるのではないだろうか。