「ジェントリフィケーション」

都市において、自分の住んでいた地域が再開発され、おしゃれでこぎれいな町に生まれ変わること。

「都市の高級化」とも呼ばれ、住宅価格や家賃の高騰を招き、もとから住んでいた貧しい人々の追い出しにつながる。

 

ジェントリフィケーションって、数年前にアメリカのニュースか何かで初めて知った言葉。

日本では私はあまりこういうケース知らないのだけど、あるのかな?

 

この本は、2014年にロンドンで実際に起きたジェントリフィケーションをベースにしたフィクション。ブレイディみかこさんって、エッセイから始まった方という印象だけれど、たぶん書きたいこと、訴えたいことが多すぎて小説に転向したんだろうな~。

 

ロンドンのホームレス救済施設に暮らす、シングルマザーのジェイド。市の予算削減にともない、救済施設から退去を迫られることになり、あわやホームレスに。そこでジェイドは仲間のシングルマザーたちと、空き家となっていた公営住宅をなんと占拠する。この動きがマスコミにも取り上げられ、結果的にロンドン市長から謝罪を得て、公営住宅に住まうことができるようになる。

 

そもそもロンドン都市部の家賃というのがものすごく高いそうだ。

ボリス・ジョンソン元首相がロンドン市長だった際にこのような発言があるらしい。

「家賃が月に2800ポンドだったらロンドンでは手頃とみなすべき」(※1ポンド160円換算で約45万円)

・・・広さがわからないのでなんとも言えないが、まあ、高いんだろう。けれど、高収入の人ばかりでは都市はたちゆかなくなる。看護士、保育士、ごみ収集職員、郵便配達職員だって都市に住んでくれないと困る。若者が、都市に住めなくなる。そして、空き家となっている公営住宅が多いという現状があるそう。

 

そしてこの本で今回もっとも心を打たれた言葉。

 

「住まいは尊厳」。

 

元日に発生した能登半島地震により、家を失われ、

厳寒のなかで避難所で過ごしている方たちがいる。

水も食糧もじゅうぶんでなく入浴もできず。

寒くてろくに睡眠もとれず。

どれだけ辛い思いをされていることだろう。

このような事態になって気づく。

住まいがあってこその人間。

たとえば被災していない地域のホテル・旅館に

仮設住宅ができるまでの間だけでも住まわせて

あげられないのだろうか、などと考えるのは、

よくわかっていない素人だからなのかもだけれど。

 

住まいを取り戻すジェイドたちの戦いを、

ちょっと違う角度でも考えつつ読了。