聖クリストフォロス

🌉美しい地球を旅するあなたへ🪦


『今考えても解決しない事は


とりあえず収納しておこう!


家の中の入り組んだ棚の奥にしまうみたいに』


と、心理学者が言うのを聞いて


何度想像の中で


冷蔵庫の奥にしまった事か😆


ハイネ詩、シューマン作曲『詩人の恋』


詩人は愛するひとへの想いを


壮大なスケールで棺に収める。


第16曲目『昔の忌まわしき歌よ』

 

16. Die alten, bösen Lieder

Die alten, bösen Lieder,
Die Träume bös’ und arg,
Die laßt uns jetzt begraben;
Holt einen großen Sarg.

昔の忌まわしき歌よ
忌まわしく邪悪な夢よ
それらを今こそ埋葬しよう
大きい棺を持ってきてくれ

Hinein leg’ ich gar manches,
Doch sag’ ich noch nicht, was;
Der Sarg muß sein noch größer,
Wie’s Heidelberger Faß.

その中に多くのものを埋めるが
それが何かは、まだ言わない
棺はもっと大きくなければならない
ハイデルベルクの樽よりも大きく


(ハイデルベルクのワイン樽🍷)
Und holt eine Totenbahre
Und Bretter fest und dick;
Auch muß sie sein noch länger,
Als wie zu Mainz die Brück’.

棺台を持ってきてくれ
それから硬くて分厚い板もだ
棺台はもっと長くなければならない
マインツの橋よりも長く


(マインツの橋より)
Und holt mir auch zwölf Riesen,
Die müssen noch stärker sein
Als wie der starke Christoph
Im Dom zu Köln am Rhein.

12人の巨人も連れてきてくれ
巨人たちはもっと強くなければならない
ライン河畔のケルン大聖堂にいる
聖クリストフォロスよりも強く

Die sollen den Sarg forttragen
Und senken ins Meer hinab;
Denn solchem großen Sarge
Gebührt ein großes Grab.

巨人たちに棺を運んでもらい
海に沈めさせてくれ
なぜならこれほど大きな棺には
大きな墓がふさわしいからだ

Wißt ihr, warum der Sarg wohl
So groß und schwer mag sein?
Ich senkt’ auch meine Liebe
Und meinen Schmerz hinein.

あなた方にはなぜだかわかるだろうか
棺がこれほどにも大きく重いのか
僕はその中に沈めたからだ
愛も、苦しみも

ドラマチックに始まり


お弔いの準備を着々と進め


巨人たちが棺を海に沈める。


主人公は聞き手に問いかける。


『棺がこれほどに大きく重いのは

なぜだか分かるだろうか?』


そこで曲調は変わり


見たこともない大きな棺に


収められた主人公の想いは


世にも美しいメロディを奏で始める。


歌い込まれたブンダーリッヒのラスト


ギーセンのピアノを何度聴いた事か。


歌はいつの間にか漂う様に消え


苦しみも悲しみも内包して美しく


自然に晒されて出来上がった天然石の様に


浄化された美だけが素朴な輝きを放つ。


静かな奇跡を残して終わる『詩人の恋』


最後までお読み頂き


ありがとうございました。


🪷今日もお気をつけて豊かな1日を💐