今日は、「虹の足」という詩をご紹介します。

父の詩は教科書に採用されることが多かったと先に書きましたが、これもその一つなので、「有名な詩」と言えるかもしれません。

この詩は第5詩集「北入曽」に収録されています。

 

 

虹の足

 

雨があがって
雲間から
乾麺みたいに真直な
陽射しがたくさん地上に刺さり
行手に榛名山が見えたころ
山路を登るバスの中で見たのだ、虹の足を。
眼下にひろがる田圃の上に
虹がそっと足を下ろしたのを!
野面にすらりと足を置いて
虹のアーチが軽やかに
すっくと空に立ったのを!
その虹の足の底に
小さな村といくつかの家が
すっぽり抱かれて染められていたのだ。
それなのに
家から飛び出して虹の足にさわろうとする人影は見えない。
―――おーい、君の家が虹の中にあるぞオ
乗客たちは頬を火照らせ
野面に立った虹の足に見とれた。
多分、あれはバスの中の僕らには見えて
村の人々には見えないのだ。
そんなこともあるのだろう
他人には見えて
自分には見えない幸福の中で
格別驚きもせず
幸福に生きていることが――。

 

 

 

父はある時仕事で群馬県の方に行きました。

その時、実際に見た風景からこの詩が生まれました。

詩中に書かれているように、虹が七色の光の弧を描いてするするっと田圃に「降りた」のだそうです。

そういう情景を初めて観た父は興奮し、感動しました。

その様子を、家に戻ってから私たち家族にも話をしてくれました。

虹が降りてくる

虹に足がある

虹の中に家や田圃がある・・・

そんな状況ってなかなか巡り逢えないものですよね。

 

私たちは、ついつい人の幸せにばかり目が行くものです。

でも、本当は「自分も幸せの中にいる」と気づくことが、大切なんだと思います。

 

父の詩ってそういう「教訓」めいたところがあるなと思うんですけど、押しつけがましくは書かない(笑)

そこが父の目論見。。。(笑)