ドリアン長野の読書三昧

ドリアン長野の読書三昧

主にブックレビューを掲載しています。

7時半に起きてシャワーをし、10時にホテルを出た。せっかくだから歩いて街を観察する。
ここらへんは結構な邸宅があり、閑静な田舎町だ。
30分歩いてメトロ駅の近くに来ると、幹線道路の前まで来た。前を歩いていたおじさんが手招きしてきた。手招きされた場所に行くと、やがてマイクロバスが到着し、おじさんが乗れ、とこれまた手招きする。事情がわからないがバスに乗る。
バス内には五、六人乗っていた。ドライバーはスマホで長い間しゃべっていたが、やがて発車。バスは駅と方向違いに走り出し、「これって大丈夫なのか」と思ったがやがて道路の分離帯をUターンし、駅に着いた。有料か?と思ったが無料だった。
よくわからないまま、駅構内を歩いていると青年に「ホテル?」と声をかけられた。彼は昨夜、駅で集まってくれた一人だ。「ホテルは見つかった?」と聞いてくれているのだ。彼はネパール出身だそうだ。「昨日はありがとうございました。ハッピーニューイヤー!」と言って別れる。
東南アジアのある国では何度も騙されたり、ぼったくられたりしたが、この国は豊かなんだと思うと警戒心がほぐれてくる。

今日は娘の一番の関心である、クリロナが所属するアル・ナスルFCのホームスタジアム、アル・アウワル・パークを目指すことにする。サウジアラビア初の大学、キング・サウード大学に隣接するらしい。
キャンパスは広大だ。娘のスマホ検索に従って歩く。暑くもなく寒くもなく、晴天で湿気もない。 
昨日食事したのはいつだっただろう。さすがに空腹感を覚え、途中でスーパーマーケットを見つけたのでチョコレートやバナナ、人参、ジュースを買って歩きながら食べる。

一時間ほど歩いたところで校門らしき場所に来た。運良くタクシーが通りがかったので乗り込む。幹線道路をぶっ飛ばす。道路標識にメッカまで何十キロと書いてある。メッカにはイスラム教徒以外は周辺に近づくこともできないので、迂回することになる。20分ほど走ってスタジアムに着いた。こりゃ、歩いては行けないわ。ドライバーは「帰りはどうする?」と言うので「スタジアムを見てからディルイーヤ遺跡に行きたい」。
「わかった。待っている間の料金は発生しないから」。

娘は「テンション上がってきた」と嬉しさを隠しきれない様子。スタジアムの中には入れないが、一周しながら、「この道をロナウドが歩いたかも」と興奮している。親としてもそこまで喜んでくれたらサウジまで来た甲斐があるというもの。途中でトイレに行きたい、と言うので近くにある小児科病院でトイレを借りる。サウジアラビアの公立病院は医療費が無料だ。子どもを抱き抱えたお母さんたちが受付で列を成していた。

ディルイーヤ遺跡はユネスコ世界遺産で、第一次サウード王国の首都として栄えた歴史的な都市遺跡であり、サウジアラビア発祥の地である。
タクシーが街中に入っていくと明らかに雰囲気が違う。ホテルやレストランが増え、観光客らしき人々があちこちで歩いている。華やかな感じだ。

QRコードでチケットを購入する。場内にはレストラン、カフェ、公園などがあり、遺跡を模し建物がある。奥に行くとサウジアラビアの歴史ビデオがあり、無料のミネラルウォーターが置いてある。なんだ、こんなもんか、と帰ろうとしたが、向こうに渡る坂道があり、そこを歩いていくとカスバのような細い道があり、両側には伝統的な泥レンガ造りの宮殿や建物が修復・保存されて建っている。これはすごい。この開発プロジェクトはまだまだ続くそうで広大な土地が修復中だった。完成したらすごい景観になるだろう。カンボジアのアンコールワットの次くらい感動した。

帰りはタクシーで最寄りのメトロまで行き、リヤド市内に戻る。サウジは車社会であり、娘はちょっとしたことでクラクションを鳴らしていることに驚いていた。サウジでは危険を避けるために気軽にクラクションを鳴らすので日本のように激高してトラブルになることはないだろう。

歩いてすぐのマスマク城へ。歴史写真、絵画
武器、防具、当時使われた古い銃、剣、火薬、
生活用具、美術品などの展示物があり無料である。
夜になると城壁にプロジェクトマッピングが映される。この前に広場があり、かつては金曜日の礼拝後に公開処刑が行われたそうだ。

広場に面してモールがあり、入ってみると所狭しと貴金属や服、デーツ、香木などの店が櫛比している。まるで大阪の本町にある船場センタービルのような昭和の匂いがする。私はこういう場所が大好きなのだ。娘も好きだと言う。一日中いたいくらいだ。ちなみに妻は全く理解できないそうだ。

夕方になると寒くなってくる。広場のレストランやカフェではかがり火を焚き、オープンカフェでアラビアコーヒーを飲んでいる。片隅に古くて小さなカフェがあったのでホットチョコレートを注文した。アジア系の青年がキビキビと働いている。娘に「あの人、よく働いているね」
「うん」と娘。

ホットチョコレートは素晴らしく美味しかった。
もし万が一、サウジにもう一度来ることがあれば、この小さなカフェを再訪したい。

広場はオレンジ色のライトで照らされている。
19時、アザーンが流れてきた。広場に響く朗々たるアザーンは私の魂を揺さぶった。この国の人々は信仰によって生きているのだ、ということが百万言の言葉よりもよくわかった。

今でもあのアザーンを思い出すたびに胸が震える。