[ジオおおのがたり4(I-1-2)]沈堕の滝 | いっちきち!やっちきち!豊後大野

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大分県のなないろベース(豊後大野市青年団)のブログです。活動のこと、豊後大野市のことを紹介します!

 こんにちは、事務局です!
みなさまは、どんな秋をお過ごしでしょうか??
さて、ここは観光の秋と参りましょう!(笑)

今回は、ジオおおのがたりです!
おおいた豊後大野ジオパークについて紹介する連載コーナーです♪
(豊後大野に関する自発的な情報発信も、なないろベースの活動の柱の1つです!)
今回で4回目!章立てでは、I章(阿蘇火砕流)‐1.滝の2回目です!
前回は、原尻の滝をご紹介いたしました!

さて、「豊後大野市にはもう1つ大きな滝がございます!何と言う滝でしょうか??」


…素晴らしい、ご名答です!
そう、「沈堕の滝」です!滝
2007年に国の登録記念物となりました☆

↑のアングルを目にされた方も多いことでしょう。
堂々とした姿ですよね!
実はこれ、沈堕の滝でも「雄滝」と呼ばれるのをご存知でしょうか??

「じゃあ、『雌滝』ってのもあるの??」
…鋭いですね!実は雌滝もございます!
▽雄滝より下流側へ。すると、画像右下にもう1つ滝を確認できませんか??

▽拡大!(撮影時期は異なりますが…。)この滝こそ「雌滝」なのです!
 
また、沈堕の滝を訪ねられた方なら、この姿を目にされませんでしたか??
 
「いったいこれは何だろう??」
この建物の正体について疑問を抱きながらも(笑)、さあ、沈堕の滝をご紹介いたします!


【目次】
(1)概要:自然面から
(2)人間との関わり:歴史面から


(1)概要:自然面から
まずは沈堕の滝のあらましをご紹介いたします!

沈堕の滝は、豊後大野市中北部、大野町にございます!
大野・清川・三重3町の境界面&川の合流点にございます。
▽なないろベース看板にて(笑)、沈堕の滝の位置を確認!
 沈堕の滝はあいにく描かれておりませんが(苦笑)、ちょうど大野町の野菜あたりにございます!

先述の通り、雄滝&雌滝とございます。
☆雄滝
高さ17m(ビル4~5階分)×幅100mという、原尻の滝に匹敵するほどの堂々たる滝です!
原尻の滝が「東洋のナイアガラ」なら、沈堕の滝は「豊後のナイアガラ」と称されます!

☆雌滝
高さ18m×幅4mと、細く繊細な印象の滝です!

「なぜ、雄滝&雌滝とがあるんだろうか??」
「そもそもこの滝って、どうやってできたんだろうか??」
…この2つの疑問を、まとめてご紹介いたします!

まず、滝のでき方について。
沈堕の滝も原尻の滝と同じ仕組み(※ジオおおのがたり2より)です。

簡単には、「冷えて固まったAso-4火砕流が、水流によって削られて崖や滝が形成される」という仕組みですv

さらに、この沈堕の滝周辺の自然環境をチェックしましょう!
▽水色の○で囲った部分が沈堕の滝(☆印左が雄滝&右が雌滝)。
冒頭申し上げたとおり、3つの町&川の合流点にあることを実感していただけたでしょうか?
特に今回は、川の合流地点ということがPoint!
「川がぶつかる→川の流れが複雑化=を巻く→川底を削る→段差・ができる」
…わけです!
沈堕の滝=大野川平井川の合流点です!
大野川の滝=雄滝平井川の滝=雌滝…というわけで、2つの滝が存在する=2つの川が合流しているから…というわけです☆

なお、この滝周辺はAso-4火砕流(=灰色、柱状節理をなす)で大量に覆われています。
その中で、こうした景観も見かけられます。
▽斜め縞模様の岩石の姿が見えませんか??

この斜め縞模様状の地質を、「大野川層群」(1億年前)と呼びます!
詳しくはII章以降でご紹介いたしますが、Aso-4火砕流(9万年前)よりもず~~~っと昔に形成されました。
1億年=1mものさしとするなら、Aso-4火砕流はわずか1mm程度…
この大野川層群の上を、Aso-4火砕流が大量に覆いました。
おおいた豊後大野ジオパークでは、こうしたAso-4火砕流+大野川層群など、阿蘇の火砕流以外の地形・景観も随所で見ることができます!
大野川層群はじめ、他の地形(付加体や祖母傾火山群など)もあるんだということを、今回あえてご紹介・予告いたしました☆



(2)人間との関わり:歴史面から
さて、ジオパーク活動で大切なのは、自然遺産+人々の活用・関わり。
この沈堕の滝は、人々の生活と多くの関わりがあります。
今回、沈堕の滝の歴史とともに、人々(それ以外も!?)との関わりを確認しましょう
※沈堕の滝については、あいにく文献等が少なく、不明なことも多いそうです。
 そのため、説明も最低限のところで…といった形になります。ご了承ください。
 (逆に言えば、「みなさまから情報募集中!」、「これから新発見もあるだろう研究しがいのある滝」でしょう☆)

1)「鎮田瀑図(ちんだばくず)」
みなさま、この絵をご覧になったことはございますか??
もしかすると、沈堕の滝展望台(大きな道路沿い側)看板でご覧になった方もいらっしゃるのでは??
 
「誰が、いつ頃描いた作品なんだろう??」

…え~、展望台看板をご覧になった方なら、作者&作品名がパッと答えられるでしょう!
(※画像中に答えがネタばれしています…(笑))

・誰   が→雪舟(せっしゅう)
・い  つ→室町時代(今から600年前)
・作品名→『鎮田瀑図
(この作品が描かれた時は、「ちんだ」=「鎮田」と表記していたとか。ただ、いつから「沈堕」と表記するようになったのかは不明とのこと・・・。)

雪舟といえば、日本を代表する水墨画家ではないでしょうか。
現存作品のうち6点が国宝にしてされているほどの実力者です☆

「じゃあ、この『鎮田瀑図』の原本はどこにあるの?現存しているの?もしかして国宝??」
…実は、残念ながら原本はもうこの世にないそうです…
関東大震災にて、原本は災失したそうです。。。(よって、国宝ではございません。)
後に、狩野常信という人物が、鎮田瀑図の複写を行ったそうです。
この複写の原本は京都国立博物館に、複写の複製品は豊後大野市役所大野支所に保管されているそうです。
原本がこの世に存在しないことは残念ですが、あの雪舟が、この沈堕(鎮田)の滝を描いたと思うと…沈堕の滝の素晴らしさが実感できるのではないでしょうか


2)刑場でもあった滝
江戸時代、沈堕の滝は岡藩領。
その岡藩で、刑を科すべきか疑わしい人物に対し、「沈堕落とし」という刑が執行されたとか。
滝から落とし、命があれば神のご加護として放免されたという言い伝えがあります。
地元の方の看板によると、雌滝が刑場だったようです。
そこに20mほどの大きな滝があったから…と考えることは妥当でしょう。
いわゆる「負の遺産」的なジオサイトでしょう。


3)舟路の難所、沈堕の滝
明治時代、大野川を経由~大分鶴崎三佐港への舟路整備工事が行われました。
(もともと江戸時代から構想あり→But!大野川沿いの一部(現在の三重町百枝地域)は当時は臼杵藩(藩が異なる=国が異なるほど制度や統治機構が異なる)→頓挫…。)
しかし、沈堕の滝は落差が大きい!=工事は難航。。。
結局、沈堕の滝では陸路を迂回したそうです。
いかに、沈堕の滝が堂々と聳えていたかがうかがえますね!…きっと♪(笑)


4)難所、沈堕の滝2~人間だけじゃない~
さて、雄滝の右側の崖をご覧ください!
 
「上部に横線みないな溝があるけど、あれは何だろう??」

実はこの滝、人間だけが交通の難所としていたわけではございません
なんと、いもこの滝に苦戦したようで…
川を遡上し産卵する魚も、この大きな滝には…

そこで、人間が魚道を作りました!
魚が滝を越えられるようにと、滝の脇にある崖に道を作ったそうです。
▽イメージ図
 
なるほど、先ほどの溝は、この魚道の跡なんですね!
あいにく、いつ頃作られ~無くなりかはあいにく不明とのこと・・・。
ただ、過去に、この魚道がなんらかの学会で賞賛されたという話が残っているそうです♪
人と自然、そして魚も関わりのあるジオサイトです金魚


5)近代化と沈堕の滝
さぁ、長々とご紹介が続きますが(笑)、みなさま、まだ1つ未解決の質問がございます!!
覚えていらっしゃいますか??

 
「いったいこれは何だろう??」
…やっとこさ、この質問の答えが登場します(笑)

この建物、実は「発電所跡」です!
立派な遺構ですね!
▽内部(※足元に要注意!!
 

先ほどから何度も紹介している通り、沈堕の滝は、落差が大きい!
それを利用した人間の知恵が、水力発電です!
明治42(1909)年からスタート。
現在のこの発電所跡に水を送り発電したそうです。
ここで生まれた電気は、大分-別府間の路面電車(「豊後電気鉄道(通称:別大電車)」に送られたそうです。
▽水力発電のモデル(滝見展望公園にて展示中)

その後、大正期に堤防をかさ上げ→大量の水を発電所に送る→安定供給を図るも、一方で、滝の落水が見られなくなった(=往時の姿が見られなくなった)との話も。
それからしばらくの時間が流れ、平成へ。
平成8(1996)年、電力会社が「往時の滝の姿に戻そう!」と、自らの予算を投じて、修景工事を実施。
Aso-4火砕流の柱状節理の下部はやわらかい層で、崩れないように(滝が後退しないように)補強。
かつ、『豊後国志』にある「(滝の容貌は)垂直分かれて十三条をなす」という記述を参考に、往時の姿に近い景観に修復されました。
▽落水なし時の滝(昨年3月、工事のため滝の落水が止まった時期がございました。)
 

6)雪舟まつり
毎年10月末に、沈堕の滝にて「雪舟まつり」が行われます☆
郷土芸能等が行われる模様です!(あいにく事務局メンバーは参加したことなし…。)
こうして、現在でも滝や雪舟は地元でも大切にされているようです☆



…と、沈堕の滝の紹介は以上です!
人々(+魚)との関わりが多い滝ですね滝

滝は、原尻&沈堕、以上2つの紹介で終了です。
(この他にも滝は市内にございますが、ひとまずジオサイト認定されている2滝を紹介いたしました☆)


次回のジオおおのがたりは、新しい分野へ突入予定です!
今度は、このAso-4火砕流(それ以外もあり)に刻まれた、この地域ならではなの祈り文化を紹介予定です!
次回1回は理論編、以降しばらくはジオサイト個別紹介編を続ける予定です。
乞うご期待を♪


以上、ジオおおのがたり4でした!
最後まで読んでくださりありがとうございましたm(__)m
また、ぜひおおいた豊後大野ジオパークへお越しくださいませ