最近の AI の進化は目覚ましく、ChatGPT のように言語を扱えるかのようなものも
登場しています。ヨハネによる福音書の冒頭の「はじめに言葉があった」のように
世界の原理は神の言葉と考える欧米人には、AI レベルが一段上がったと見えている
ことでしょう。
その関係か言語が使えることはほかの動物にはない人間ならではの能力だとされて
きました。そもそも言語とは何であり、どうやって生まれたのかは未だに明らかに
なっていません。同じ人間なのに言語が違うとモノ・コトの名前はまったく違って
おり、言語内でもどのように発展してきたかは非常に謎が多い。
この本では、どの言語でも大体似たような響きになる「オノマトペ」が言語のもと
だと考え、それを研究することで言語の本質に迫ろうとしています。オノマトペは
言語にとってプリミティブというのは同意ですが、著者らの論の進め方はちょっと
強引な感がして気になります。記号接地問題に対してオノマトペが重要というのも
同意ですが、最近の文章生成 AI は記号接地なしでうまく動いているという点には
問題提起だけで何も解を与えていないのがちょっと物足りない。そのへんに関する
解説もあったらよかった気がします。
まあ個人的に文章生成 AI から興味を持ってこの本を読んだだけなので、その期待
には答えられていないだけで、言語の本質にはなかなか鋭く迫っている面白い内容
だと思います。前半のオノマトペに関する章より後半の認知科学に関する章の方が
個人的にはおススメです。