「 あなたはいつも私ばかり視ていた。私が云うのも可笑しいし恥ずかしいけど私のどこがそんなにイイのか解らなくなるくらい本当にあなたは私ばかり視て嬉しそうにしていた。未だ可愛い盛りの柚菜と柚羽が偶にムッとする程で私はむしろそっちの事に不安を抱いてたくらいだわ。喧嘩ばかりしている両親の間に挟まれて育つのは論外だとしてもやはり子供は常に自分に注目を集めたいでしょ..


     ..其れはそうとして..だから、あなたが何かを隠そうとして私にいい加減な作り話をしているとは思わないわ..


  ..でもこれ程話がずれているのはね..



 私が記憶している昨日最後に見たあなたは.. 」



 私は、改めて時枝の方を真っ直ぐ向いた。



 「あなた突然車停めたと思ったらひとりで車外に出て車の周りをぐるりと足早に見回ったのよ..何がどうしたのか不思議でしょうがなかったわ。更にあなたは慌てたようにしゃがんで車の下を覗き込んで..その後駆け足で走ってっちゃったのよ..私の名前を叫びながら..私や柚菜と柚羽、車ごと置き去りにしてね..来た方向、トンネルの入り口の方へ.. 」




 私は時枝から視線を外し下を向いた..



 再び時枝に真っ直ぐ見上げて云った..






 「 その.. だから何故トンネル?


 ..トンネルって一体何処のトンネル?」






 「 知らないわ。私が人一倍道に詳しくないのはあなたもよく知ってるでしょ..

    ..あなたが..

 “ ちょっと行くから用意しろ.. "


 ..突然私達にそう云って連れてかれたんだもの..何も詳しい事は話さずに.. 」





 「 何時頃? 」



 「 10時過ぎてたかしら.. 遅めの朝食を食べ終えて直ぐだったわ。 」



 「 他に何か言ってなかったか!? 」



 時枝は表情を強張らせた..


 「 あなた本当に憶えてないの?あなたの話した昨日地下鉄の駅に居たって話本当に本当なの? 」


 「 ..... .. 」


 私はこれ以上無理だと判断した..



 「 もうやめよう。俺も君もお互いに嘘は云ってないと念うよ。

    ..で..柚菜と柚羽の容態はどうなんだ?トレーラーに跳ねられたんだろ?」





 突然時枝の目から大粒の涙が溢れ落ちた。



 「 ぇ ? 」