葬送行進曲といえばショパンのピアノソナタを思い浮かべる。というか有名だ。僕はベートーベンのピアノソナタ第12番 変イ長調 作品26の第3楽章 変イ短調 Maestoso Andante を思い浮かべる。冒頭に「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」と副題がついているので、第12番全体を「葬送」と呼ぶことがある。この「ある英雄」が誰かこれまでに様々な議論がされてきてはいるが、わかっていない。この第3楽章は様々な音楽家に高い評価を得ており、ショパンもこの楽曲に強く影響を受けている。第12番は1801年に完成しているが、ピアノソナタ集にありながらソナタ形式が一つも無い。ベートーベンは一つの様式美の終焉をこの第12番で伝えたかったのではないだろうか。また、ベートーベンのピアノソナタで自筆譜が唯一現存する楽曲で、最も古い。
楽曲全体に内声部に旋律があり、時を刻むような行進と、時を止めるようなノンレガートの部分に明確にわかれている。時折左手の重奏部が地響きのように聞こえてきて、この音楽が持つ場面を明確に示している。ファンファーレの部分は暗闇の雲を晴らすように響き、葬送にふさわしい天からの慈しみを感じることができる。
ベートーベンはさらに1815年に劇音楽「レオノーレ・プロハスカ」(オペラ「フィデリオ」になる序曲「レオノーレ」ではない)をかいている。この第4曲にピアノソナタ第12番の第3楽章を転用している。残念ながらこの劇は上演されず、音楽だけ初演されたのは、ベートーベンの葬儀のときだった。穿った見方かも知れないが「ある英雄の死を悼む」とは、ベートーベン自身と彼の音楽に対するものだったのではないか、と思ってしまう。
ところで、ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルのピアノ曲に関する研究だが、もう年内に完成させるのはあきらめて、お蔵入りを決め込もう等と思う。彼女の膨大な交友記録や弟との手紙のやりとりだけで、音を上げている。まぁ時間が許せば来年への持ち越しも考えてはいる。とは言う物の、ブログで公表などできないので、進捗状況ぐらいしか披露できないが、ご容赦願いたい。